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3/1 2021

コケの伝道師が選ぶ! 身近なかわいいコケ ベスト10

 自然科学分野出版のスペシャリスト・文一総合出版の児童書『森の小さな生きもの紀行』の第3弾は、満を持してコケの登場です!
 道端でも、庭でも、公園でも、その気になればコケはどこでも見つけられます。コケが生育できないのは海と砂漠だけ、と言われているくらいです。いったん見つかると、ここにも!あそこにも!と、次から次へとコケが見つかるようになりますよ。
 今回は、関東の身近な環境で見つけることができるコケの中から、とにかく『かわいい!』コケを、『あなたの あしもと コケの森』の著者が個人的な独断と偏見でお伝えします。ルーペや虫眼鏡を片手に、お散歩しながら探してみて下さい。

第10位

ユミダイゴケ
かわいいだけではなく、見つけられたらラッキー、というレア感も相まって、出会えるとうれしいコケ。胞子のうの付け根が長く伸び、弓のような形になるのが特徴です。茎は長さ5mmほどしかないので、胞子体ができないとまず見つけられません。公園や植え込みのむき出しになった土の上で、胞子体が熟す春に探すのがおすすめです。

写真 新井文彦

第9位


ヒメジャゴケ
ヘビのような模様があるので「蛇苔」の名がついています。模様が似ているジャゴケ(オオジャゴケ)というコケもありますが、ヒメジャゴケはそれより小さく、長さは1~3cmほどしかありません。湿った土の上でよく見られます。秋になるとふちに無性芽とよばれる粒をつけ、全体的に赤っぽくなります。季節の変化も楽しいコケです
 

写真 新井文彦

写真 新井文彦

第8位


ツチノウエノコゴケ
その名の通り、土の上に生える小さなコケです。日当たりのよい所に生え、胞子体をよくつけるので、群生すると目立ちます。葉は針のように細く、乾くとくるくると縮れます。

第7位


ギンゴケ
南極や、乾燥や大気汚染が進んだ都市部にも生えることができる強いコケです。葉の上半部の細胞が透明で、全体的に白緑色に見え、見分けやすいコケの1つでもあります。あまり頻度は高くないのですが、胞子体をつけることもあり、その胞子のうが丸っこく、とてもかわいらしい形をしています。胞子体もぜひ探してみて下さい。



写真 新井文彦

第6位


ジンガサゴケ


春先に丸くてかわいらしい生殖器官(雌器床=しきしょう)をつけます。ゼニゴケが畑や比較的田舎の家の庭などで見られることが多いのに対し、ジンガサゴケはより人工的な環境でも見つかりやすいように思います。道路脇の植え込みや、住宅街の家の庭にもよく見られます。

第5位


タチヒダゴケ
木の幹にポコポコとした小さな深緑色の群落をつくります。胞子のうは縦にひだがある帽子をすっぽりとかぶっていて、帽が取れた後にあらわれる蒴歯(さくし)は、鮮やかな黄色です。かわいらしい胞子体を観察するなら、成熟する冬がおすすめです。
 

写真 新井文彦

第4位


コツボゴケ

日陰の湿った土の上に大きな群落を作ります。葉が丸くてかわいらしく、胞子体も大きくて見栄えがします。若いときの胞子体の柄は真っ赤で、秋から冬にかけてよく目立ちます。私が勤務する博物館には、コツボゴケをメインにした大きなコケ庭があり、雨上がりの群落の美しさは格別です。
ちなみに、葉の細胞が大きめで、顕微鏡観察にも適したコケです。細胞をのぞくと、葉緑体がキラキラとした宝石のように散りばめられています。

写真 新井文彦

胞子体

細胞

第3位


ヒナノハイゴケ
サヤゴケと並んで、身近な木の幹によくついているコケです。コンクリートなどにも生育します。とにかく垂直面を好むようです。
基物を這いながら深緑色の丸い群落を作りますが、中央が枯れ落ちて群落がドーナツ形になるのも面白い特徴です。胞子のうがかわいらしく、若いときはチューリップハットのような裾にフリルのある帽子をかぶっていて、成熟するとオレンジ色のきれいな蓋(ふた)と蒴歯があらわれます。
胞子のうの口が色づく様子から、別名クチベニゴケとも呼ばれます。私が卒業論文のテーマにしたコケなので、個人的に愛着があるコケです。

写真 新井文彦

写真 新井文彦

第2位


ゼニゴケ
嫌われることも多いかもしれませんが、私は「激推し」したい、かわいいコケの1つです。
春や秋に小さなヤシの木のような雌器床ができますが、その形がじつにユニークです。雌器床の下に黄色い胞子のうをぶら下げ、成熟すると、中から弾糸(だんし)と呼ばれる黄色い糸と胞子の粒がふわふわとこぼれてきます。この黄色と緑のコントラストもきれいです。
じつは、私がコケの道に入るきっかけを作ってくれたコケで、高校生のときに道端でゼニゴケに出会い、そのかわいさに衝撃を受け、ひと目惚れしたのがすべてのはじまりでした。そんな個人的な感情もあって、2位にランクインです。

写真 新井文彦

写真 新井文彦

第1位


サヤゴケ
木の幹に深緑色の群落を作ります。道路沿いや公園など、多くの身近な木で見つけることができます。
かわいいのは、なんといってもその胞子体。蒴歯が真っ赤で、ルーペでのぞくと、宝石のルビーのように美しく輝きます。胞子の鮮やかな緑色とのコントラストもまたきれいです。
さらに、蒴歯は霧吹きで水をかけると瞬時に閉じ、しばらく見ていると、乾燥するにつれてふわっと開いていき、最後は外側にくるっと丸まります。
この本のために、改めて写真家の新井文彦さんと一緒に写真を撮りましたが、「めちゃくちゃきれい!」と、2人で盛り上がり、しばらく興奮冷めやらぬ感じでした。赤い蒴歯を観察するなら、胞子体ができたばかりの5月下旬から6月ごろに観察するのがおすすめです。胞子体が古くなると、蒴歯の赤色は、どんどん色がくすんでしまいます。

写真 新井文彦

写真 新井文彦

身近な生き物に出会いに行こう

いかがでしたでしょうか?
本では書ききれなかった一推しのコケたちについて、つい語りすぎてしまいました。写真絵本『あなたの あしもと コケの森』には、これらのコケを含めた身近な25種のミニ図鑑と検索表も掲載しましたので、ぜひお手にとっていただけたらうれしいです。


 きのこ、粘菌、コケをはじめとする隠花植物に興味がある人は、『森の小さな生きもの紀行』の『きれいでふしぎな粘菌』『いつでも どこでも きのこ』もおすすめです。
 
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Author Profile

鵜沢美穂子

千葉県一宮町出身。ミュージアムパーク茨城県自然博物館副主任学芸員。博物館では、コケの雌雄性や形態の研究、展示製作や教育普及活動を行っている。趣味は読書と、全国各地のコケめぐり。

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