一覧へ戻る

Bird

  • 鳥

5/16 2018

バードウォッチング発祥の地・イギリスで見つけた野鳥モチーフ

オックスフォードのパブ、The Eagle and Child.その名の通り、ワシが看板に描かれている

鳥は色や形の美しい種が多く、モチーフとしてよく使われる。ただ、そのほとんどが「小鳥」とか「鳩」とわかる程度の表現で、メジロだのシジュウカラだのという種までは識別できないことが多い。でも鳥好きになると、ただの「小鳥」では満足しなくなり、自分が好きな特定の鳥のモチーフを探したくなる。
 
日本ではメジロなどの身近な鳥でも、それをモチーフにした商品や店名は滅多に見かけない。新幹線に「はやぶさ」、東京湾を走る電車に「ゆりかもめ」はあるが、野鳥のハヤブサ、ユリカモメという種に結びつくほどの、姿かたちのイメージがわかる絵は描かれていないように思う。
 
わたしは2010年からイギリスの大学に留学し、3年間ケンブリッジで暮らした。イギリスはバードウォッチング発祥の地と言われ、鳥類学も鳥類保護も盛んな国だ。大学での専攻は絵本や児童書の絵を学ぶコースだったのだが、イギリスでの鳥探しも、渡英の目的の半分だった。
 
イギリスで新生活を始める学生はみな、日用品や雑貨を揃えるのにまずチャリティーショップをのぞく。人々が寄付した不要品を安く売っている店で、売り上げは慈善活動に当てられる。とりあえずお皿とスプーンとフォークが1つずつ欲しいと思ってお店に入ったら、ガラクタ篭の中に印刷されたヨーロッパコマドリの絵が入った額縁を見つけて感動した。壊れかけた額で50ペンス(80円ほど)だったので、思わず買って長らく部屋に飾っていた。

ヨーロッパコマドリの額絵

ハリスツイードとリネンの端切れで作られた手作りの布絵

 
街の中心で開かれる市場では小さな布絵が売られていて、その中の数枚がアオガラ、ヨーロッパコマドリ、ミソサザイ、カワセミだったこともある。デフォルメされていても種がわかる。どれもケンブリッジの街中で普通に見られる鳥だ。
 
お菓子コーナーでも鳥モチーフを見つけた。リコリスというグミのような食感のお菓子で、通常は真っ黒く、実は日本人に一番不人気とも言える食べ物だが、わたしの好物でもある。黒と白の色からの連想だろうか、キンクロハジロ(Tufted Duck)からtuftyと名付けられていた。

リコリスというお菓子。
スペインカンゾウの根とアニスオイルで味付けされている

 
パブにも鳥の名前がついていることが多い。ケンブリッジの一番有名なパブは“The Eagle(ワシ類)”だし、“The Swan(ハクチョウ)”、 “The Falcon(ハヤブサ類)”などはいくつも見かける。全国には“The blackbird(クロウタドリ)”、 “The Turnstone(キョウジョシギ)”、 “The Harrier(チュウヒ類)”、 “The Woodlark(モリヒバリ)”などもあるという。 “The Moorhen(バン)“という名のB&Bに泊まったこともある。

シェイクスピアが生まれたストラトフォードのパブ

ノーフォーク州のB&B(Bed and breakfastの略で、家族経営の小規模宿泊施設)

“The Moorhen(バン)“という名のB&B

 
こんな風に、日常生活の中に鳥モチーフが小鳥から猛禽類、水鳥まで出てくるのは、イギリス人が国民的に鳥に親しんでいるからだ。一般の日本人はツバメ、スズメ、キジならば、およそどんな鳥かを知っているが、イギリス人の場合はそれが数十種類に及ぶ。法学や芸術を学んでいた大学の友人も、一般常識としてヨーロッパコマドリだけでなく、庭に来るアオガラ、ズアオアトリ、ゴシキヒワなど5,6種類の鳥が見分けられた。チュウヒ類やサンカノゴイなど、自然保護区に行かなくては見られない鳥も、自然系のテレビ番組を通して知っていることが多い。
18世紀、19世紀に博物学が盛んで、自然科学が学問の世界だけでなく政界や日常の話題であった歴史的背景に加えて、休暇を自然の中で過ごす人が多いことが影響していると思う。家族や友人との旅行先が、湖水地方や南西部の海岸など、特にアトラクション施設のない田舎で、ハイキングやアウトドアスポーツ、読書をして過ごす。小さい頃から外遊びをする中で、自然と鳥を眺めるようになり、親から子へ、友人から友人へと鳥についての知識が伝わっている。また最近は、これら鳥モチーフが日常生活にあることで、パブの名前などから逆に鳥を覚えるようになっているに違いない。
 
日本とイギリスで、見られる鳥も、その距離もそう変わりはないのに、イギリスでは一般の人の生活文化の中に野鳥が入っている気がした。

Author Profile

東郷 なりさ

1987年生まれ.イラストレーター,絵本作家.東京農工大学で生態学や環境教育などを学んだ後,3年間イギリスに滞在し,ケンブリッジ・スクール・オブ・アートで絵本作りを学ぶ.
ブログ:http://narisatogo.blogspot.jp/

Information

このページの上に戻る
  • instagram