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7/6 2018

氷河期の生き残り、ライチョウを見に行く

立山のライチョウ

氷河期の生き残りと言われる鳥、ライチョウ。日本国内では頚城(くびき)山塊、北アルプス、乗鞍岳、御岳山、南アルプスの標高の高い冷涼な場所で暮らしている。生息しているのが、標高2,000メートル以上の高山なので、軽い気持ちで見に行くというわけにはいかない。それなりの装具と、本格的な登山が伴う。
 
しかし、本格的な登山をせずにライチョウに出会える場所がある。富山県の立山だ。立山黒部アルペンルートを使えば登山をすることなく、乗り物に乗って標高2,400メートルまで楽ちんで行けてしまうのだ!

雨上がりに浄土山から立山にかけて虹がかかる

黒部ケーブルカー。いろいろな乗り物を乗り継ぐが、登山に比べれば超・楽ちん

ライチョウの1年の暮らし

まずは、ライチョウがどんな鳥で、どんな生活を送っているのかを説明しよう。
ライチョウは、キジ目キジ科ライチョウ属の鳥で、くちばしの先から尾羽の先までは約37センチ。日本で見られるライチョウは2種類。北海道に生息する森林性のエゾライチョウと、本州の高山に暮らすツンドラ性のライチョウだ。ちなみに、季節によって羽の色が変わるのはライチョウで、エゾライチョウは一年中同じ色だ。
ライチョウの仲間は、北半球の北部に広く分布している。世界でいちばん南に生息する日本のライチョウは、特別天然記念物に指定されていることや、人から危害を加えられることが少ないため、人をあまり恐れないが、それ以外の地域では狩猟鳥なので、とても警戒心が強いという。ちなみに北アメリカのハドソン湾やカムチャッカ半島では、冬には海岸で見られるという。日本人の感覚では「高山の鳥」なので驚きだ。

ライチョウの世界分布 (青色は越冬地、緑色は周年生息する地域)

春、雪面を歩いてエサを探すオス(冬羽)

冬の間は、若干標高の低い森林帯でオスとメスが別々の群れを作って生活をしているが、春になると繁殖のために群れを解消して、なわばりを作りに標高2,000メートル以上の高い場所へやって来る。
ペアになるとなわばりのなかで生活するようになり、オスはひたすらメスをエスコートする。6月になるとメスはハイマツの下や茂みなどに簡単な巣を作り、1日1卵を産み、6~8卵そろってから抱卵を開始する。これは、ヒナがいっせいにかえったらすぐに移動を開始するため。もしも毎日ヒナがかえっていたら、巣ごと外敵に襲われる危険があるためだ。抱卵期間は21~22日と言われる。
オスは、なわばりに侵入するほかのオスを追い出しながら、必死になわばりを守る。時には血みどろのケンカになることもある。しかし、7月になると目立つ場所で見張りをしていたオスの姿が急に見えなくなり、かわりにかわいいヒナ連れのメスが姿を現す。なわばりは解消され、オスはひっそりと目立たない生活をはじめる。オスは子育てには参加せず、メスとヒナだけの生活がはじまる。10月になり、ほぼ親鳥と同じ大きさになったヒナは若鳥と呼ばれ、親鳥とわかれて兄弟での生活がはじまる。
ライチョウは、年に3回換羽(かんう:羽が抜け替わること)をする珍しい鳥で、冬羽はオスもメスも白色、夏羽のオスは黒っぽい体と白い腹、メスは黄色の体に白い腹に変身する。秋羽は、オスもメスも黒っぽい灰色になる。また、冬羽になると足先まで羽毛でおおわれ、寒さ対策と雪面を歩きやすいように「かんじき」の役目をする。換羽は、気温や雪で変化するのではなく、日照時間によるホルモンの変化によって引き起こされるという。雪が積もるころになると再び群れを作り、1,800~2,200メートルの樹林帯で生活する。

10月秋羽のオス。足に特徴的なふさふさの羽毛が目立つ

まずは立山室堂へ行ってみよう!

立山への行き方

立山室堂には富山県側の「立山駅」と、長野県側の「扇沢」(おうぎさわ)から行くことができる。立山駅からはケーブルカーで美女平駅、そこから高原バスに乗り換えて風景を楽しみながら約1時間で室堂ターミナルに到着。
長野県側の扇沢からは、トロリーバスで黒部ダム。風景を楽しみつつ徒歩15分ほど移動してケーブルカーに乗り換え黒部平へ。ここから立山ロープウェイに乗り、雄大な景色を堪能しながら大観峰駅へ。最後はトロリーバスで室堂ターミナルに到着。こちらは約2時間の旅となる。
夏であれば、服装は晴れていれば半袖・半ズボンでも大丈夫だが、紫外線が強いので薄手のシャツと長ズボン、運動靴か軽登山靴がいいだろう。帽子とサングラス、日焼け止めクリームは必携。朝夕は曇って風が強く吹くと気温が一気に下がるので、レインウェアがあると便利。薄手のセーターやフリースを準備して行くと安心だ。

ライチョウを探す

夏休みの立山では、かわいいヒナ連れのライチョウ親子を見ることができる。しかし、いきなり探すのは難しいので、室堂ターミナルに到着したらまず隣接する「立山自然保護センター」に行き、情報を仕入れるといい。
ライチョウは野鳥なので、「必ずいる」という場所はない。それでも、みくりが池周辺は個体数が多いので、遊歩道をゆっくりと歩いて探すといい。時々、双眼鏡であたりを見まわし、人がたくさん集まってカメラを構えていたら行ってみよう。運がよければかわいい親子に出会えるかもしれない。この時期、オスは目立たなくなるので、もし出会えたらラッキーだ。宿泊をするなら朝と夕方がいちばん出会いやすいので、頑張って探してみたい。

親鳥の腹に入って暖をとろうとするヒナたち

みどりが池に立山が写り込む

ライチョウに出会えたら?

日本でもっとも人を恐れない野鳥はライチョウだろう。それは長い間、人間たちから危害を加えられなかったからだ。しかし、個体差もあるので、近づいて逃げだしたら距離をとって観察しよう。じっとしていれば、向こうから近づいてきて足の横を通るかもしれない。親子連れのヒナはとってもかわいいが、ヒナはふ化して1か月ぐらいは自分で体温調節ができない。追いかけまわすと親鳥とはぐれて寒さで死んでしまうこともあるので、そっと見守ってほしい。
立山室堂では、遊歩道以外は立ち入り禁止だ。高山植物は非常に弱いので、植生を踏んでしまうと大きなダメージを受けてしまう。くれぐれも入らないでほしい。

ロープ越しにライチョウ親子を観察する観光客

親鳥が移動して腹から出るヒナたち

どうしてもライチョウたちに出会いたいときは……

運悪くライチョウに出会えず残念な結果となってしまったら……。どうしてもライチョウが見たいという人は、ゴールデンウィーク後から6月中旬に行くのがおすすめ。この時期は繁殖期で、ライチョウのオスが目立つ岩や杭の上で自分のなわばりを見張るので出会いのチャンスが多い。また、なわばりに侵入してきたオスに対して、追い出し行動とケンカをするので、ライチョウの飛ぶ姿を見られるだろう。

見張りに立つオス

Author Profile

戸塚 学

1966年、愛知県生まれ。野鳥の生態を中心に撮影。きれい・かわいいだけではなく、人間生活とのかかわりあいや、環境を絡めた撮影を進める。究極は「ニオイのする写真」を目指して活動中。主な著書に『らいちょう ころころ』『鳥たちは今日も元気に生きてます!』(文一総合出版)、『ヤンバルクイナ・アガチャーの唄』(そうえん社)など。日本自然科学写真協会(SSP)会員、(公財)日本野鳥の会会員、西三河野鳥の会会員。

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