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植物

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11/26 2018

なぜ紅葉するの? 葉の色が変わる「色素」のメカニズム

 
秋といえば、紅葉のシーズン。どうして秋になると葉の色が変わるのでしょうか?
美しい紅葉の条件、色素による葉の変化のメカニズムを、わかりやすくご紹介します。
 

そもそも葉が緑色に見えるのはなぜ?

葉は表面だけでなく内部も緑色。葉の断面図を見ると、葉は複数の細胞層からなり、それぞれの細胞にはだ円形の葉緑体がぎっしりと詰め込まれていることがわかる。葉緑体は光合成を行う装置で、緑色の色素であるクロロフィルを含んでいる。このクロロフィルこそが、葉の緑色の正体だ。
▶クロロフィル:緑色の光合成色素。光エネルギーを吸収する役割をもつ。
 
光合成では、太陽の光エネルギーを使って二酸化炭素と水からグルコースと酸素が作られる。このとき、光エネルギーを捕まえるアンテナのような役割を果たすのがクロロフィルである。太陽光は、葉の表面だけでなく内部まで届く。その光により、内部の細胞にある葉緑体でも光合成が行われる。

緑色の葉イメージ図(絵:林部京子)

葉の断面構造イメージ(絵:林部京子)

落葉と資源の回収

秋になると日照時間は短くなり、気温も下がる。光合成にかかわる酵素反応は温度の影響を受けやすく、気温の低下に伴って光合成の効率も悪くなる。すると、秋〜冬の太陽光でも光が強すぎる状態になり、余分な光エネルギーが光合成装置の破壊をもたらし、光合成活性はさらに低下して葉の老化が進む。光合成効率が低い葉をつけていると、寒い冬に葉を維持するエネルギーが不足するため、植物の生存にとっては不利になる。そこで、落葉広葉樹では葉を落とす準備として、まず再利用できる物質の回収が始まるのだ。
 
光合成効率が低下した葉緑体では、クロロフィルから、細胞にとって有害な活性酸素が発生しやすくなる。そのため、クロロフィルは比較的速やかに分解される。分解された物質は成長のために冬芽や根などの器官に運ばれ、翌年の資源として貯蔵される。このように資源の回収が進むと、葉柄の付け根には「離層」と呼ばれる細胞層が形成される。離層により葉と枝を結ぶ管が遮断されると物質の流れは止まり、細胞の液胞には老廃物とともにグルコースが蓄積する。

葉の付け根イメージ図(絵:林部京子)

葉が赤くなる理由

紅葉の赤色の正体は、アントシアニンという色素である。離層の形成に伴いグルコースが葉に蓄積し、そのグルコースがアントシアニンの前駆体アントシアニジンに結合するとアントシアニンは完成する。
▶アントシアニン:赤色色素の総称。抗酸化作用、活性酸素の生成を抑制するといった働きがある。
クロロフィルが分解されて減り、アントシアニンが次々に合成されることによって、葉は赤くなる。例えば、紅葉の代名詞であるカエデの葉は、緑色から少し黒ずんだ赤紫色に変化し、やがてきれいな赤色になる。これは、アントシアニンが合成されても一部のクロロフィルが分解されずに残っていると、赤色と緑色が混ざって黒ずんで見えるためだ。クロロフィルがほぼ完全に分解されると、葉はアントシアニンによる鮮やかな赤色になる。
 
それでは、落葉前にわざわざアントシアニンを合成する理由とはなんだろう? アントシアニンには紫外線吸収作用があるため、紫外線で生じる障害から細胞を守っているという説がある。その他、鮮やかな赤色がアブラムシなどの害虫に対する警告となって、食害を防いでいるとの説もあるが、それらの詳細はまだ明らかにされていない。

色素による葉色の違い(絵:林部京子)

葉が黄色くなる理由

イチョウやポプラなどに見られる黄葉。その黄色の正体は、カロテノイドという色素である。春から夏にかけて、緑色の葉にもカロテノイドは含まれている。しかし、クロロフィルとカロテノイドは8:1ほどの比率なので、カロテノイドの黄色はクロロフィルの緑色に隠されてしまい、葉は緑色に見える。
▶カロテノイド:黃・橙・赤色の色素類の総称。強い抗酸化作用が特徴。
 
ところが、葉の老化に伴ってクロロフィルが速やかに分解される一方で、カロテノイドは葉緑体の膜中にあるタンパク質と結合しており、比較的分解されにくい。両者の分解速度が違うために、クロロフィルが分解されるにつれ、緑色に隠れていたカロテノイドの黄色が目立つようになるのだ。

 
美しい紅葉の条件
 
1. 晴天が続き、空気が澄んでいて十分な太陽光が葉に当たる。
2. 昼と夜の寒暖の差が大きく、夜には急激な冷え込みがある。
3. 降雨が少なく、地中がほどよく乾燥する。
4. 葉が枯れないくらいの適度な湿度がある。
 
秋が深まる頃にこれらの条件がそろうと、アントシアニンの合成が促進されると考えられている。そのため、条件がそろいやすい山地では、木々が鮮やかに色づくことが多い。

カラフルな葉のなかでは、何が起きている?

1枚の葉が緑や黄色、赤色でにぎわっていることがある。葉の色は、クロロフィル、カロテノイド、アントシアニンの比率で変わるので、例えば、何らかの原因により細胞ごとのアントシアニンの合成が不均一だと、カラフルな葉になる。このとき、緑色の部分にはクロロフィルが存在しており、黄色の部分ではクロロフィルが分解され、アントシアニンが合成されずにカロテノイドの色が現れている。赤色の部分ではクロロフィルが分解され、アントシアニンが合成されている状態である。
 
人工的に葉の一部を遮光すると、その部分ではアントシアニンの合成が周辺部分よりも遅れることから、光の当たり方は、クロロフィルの分解速度やアントシアニンの合成速度に影響を与える要因の一つと考えられている。

茶褐色の葉(絵:林部京子)

最後には茶褐色になる葉

葉は、赤や黄色に色づいた後、茶褐色になる。この色の原因はタンニンである。タンニンは、化学防御物質として多くの植物に含まれており、タンパク質と結合しやすいという性質を持つ。例えば、昆虫や哺乳類が大量のタンニンを含む葉を摂食すると、タンニンにより消化酵素が変成して働かなくなり、栄養の吸収が妨げられる。このため、葉は被食されにくくなる。また、タンニンは紫外線を吸収することから、細胞内のタンパク質や核酸などを紫外線から保護する働きもある。
 
葉の老化が進むと、アントシアニンやカロテノイドも分解される。すると、細胞の液胞内に多量に含まれるタンニンが、分解されたさまざまな物質と、あるいはタンニンどうしが次々に結合していく。その過程で葉は茶褐色になっていく。
 
 
※本記事は、「生きもの好きの自然ガイドこのはNo.5 魅せる紅葉」の内容を再編集したものです。
 
 

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Author Profile

保谷 彰彦

東京大学博士課程修了。博士(学術)。サイエンスライター。専門はタンポポの進化や生態。農業環境技術研究所、国立科学博物館植物研究部でのタンポポ研究を経て、企画と執筆の「たんぽぽ工房」を設立。現在、文筆業のほかに、大学で生物学の講義なども行う。著書に『タンポポハンドブック』などがある。
HP:http://www.hoyatanpopo.com

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