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6/17 2019

絶滅の危機に立たされた鳥たち

絶滅の危機に立たされた鳥たち

日本には約650種の鳥の記録があるが、そのうち何種類の鳥に絶滅のおそれがあるかご存じだろうか?
トキやヤンバルクイナの危機は知っている人も多いと思うが、ほかにも急を要する鳥、あるいは保護活動が成果を見せはじめている鳥もいる。
ここで紹介するのは、環境省版レッドリストで「絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に登録されている、これ以上減少すれば「野生絶滅」あるいは「絶滅」という崖っぷちの鳥24種だ。

(以下、BIRDER2019年7月号特集「絶滅の危機に立たされた鳥たち」より「日本の絶滅危惧鳥図鑑」から一部抜粋。)
(イラスト:一日一種)

トキ

トキ Nipponia nippon ペリカン目トキ科
2018年10月までにのべ327個体が放鳥され、野生下での個体数は約340羽である。2019年のリストの改訂で、EW(野生絶滅)からカテゴリーが見直された。そもそもの減少の原因は明治以降の乱獲や農薬による食物となる動物の減少,生息地の破壊など。1981年に国産のトキは絶滅、1999年に中国から贈呈された個体が増殖して現在に至る。

カンムリワシ

カンムリワシ Spilornis cheela perplexus タカ目タカ科

沖縄県石垣島と西表島に留鳥として生息。水田や草原などに隣接する林などで見られるが、沖縄がアメリカの占領下にあった時代に狩猟対象となって数を減らしたといわれる。復帰後の保護政策で数は回復し、現在の個体数は両島で200羽以上と推定されているが、採食環境である湿地や水田の減少に加え、路上で採食中に交通事故に遭うなど状況は悪化している。

シマアオジ

シマアオジ Emberiza aureola ornata スズメ目ホオジロ科

北海道で繁殖するほか、日本海の離島でも記録がある。ユーラシア大陸北部の草原で広く繁殖し,1980年代は普通種だったが、1990年代に減少しはじめ、2017年にIUCNレッドリストでもCRに指定。普通種だった鳥がこれほど短期に急減した例はない。主な減少要因は越冬地である中国や東南アジアでの食用の捕獲や密猟。2017年に北海道の繁殖地で約30つがいの生息が推定され、残された国内の繁殖地の保全と拡大が急務。繁殖分布の西端のフィンランドでは2007年を最後に観察されていないことから、2019年5月に地域絶滅と発表された。
 

その他の絶滅危惧IA類の鳥

ハクガン Anser caerulescens caerulescens カモ目カモ科
シジュウカラガン Branta hutchinsii leucopareia カモ目カモ科
アカガシラカラスバト Columba janthina nitens ハト目ハト科
オガサワラヒメミズナギドリ Puffinus bryani ミズナギドリ目ミズナギドリ科
クロコシジロウミツバメ Oceanodroma castro ミズナギドリ目ウミツバメ科
コウノトリ Ciconia boyciana コウノトリ目コウノトリ科
チシマウガラス Phalacrocorax urile カツオドリ目ウ科
オオヨシゴイ Ixobrychus eurhythmus ペリカン目サギ科
ヤンバルクイナ Gallirallus okinawae ツル目クイナ科
ヘラシギ Eurynorhynchus pygmeus チドリ目シギ科
カラフトアオアシシギ Tringa guttifer チドリ目シギ科
エトピリカ Fratercula cirrhata チドリ目ウミスズメ科
ウミスズメ Synthliboramphus antiquus チドリ目ウミスズメ科
ウミガラス Uria aalge inornata チドリ目ウミスズメ科
キンメフクロウ Aegolius funereus magnus フクロウ目フクロウ科
ワシミミズク Bubo bubo フクロウ目フクロウ科
シマフクロウ Ketupa blakistoni blakistoni フクロウ目フクロウ科
ミユビゲラ Picoides tridactylus inouyei キツツキ目キツツキ科
ノグチゲラ Sapheopipo noguchii キツツキ目キツツキ科
チゴモズ Lanius tigrinus スズメ目モズ科
オガサワラカワラヒワ Chloris sinica kittlitzi スズメ目アトリ科
 
 
絶滅危惧IA類に登録されていなくても、近年急激に数を減らしているカシラダカやシロチドリなどもおり,心配は尽きない。これらの鳥がイラストや写真だけの存在にならないよう、我々にできることを探していきたい。
 
 
 

 
ここで紹介したすべての鳥のイラストや詳しい解説はBIRDER2019年7月号「絶滅の危機に立たされた鳥たち」に掲載中。
「絶滅の危機に立たされた鳥たち」では,「そもそもレッドリストって何? 」といった基本から、身近な鳥に迫る絶滅の危機、光明が見えはじめた鳥たち、調査から見えてきた今後の動向が心配な鳥の共通点など、最新情報満載でお届けする。
 
 
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イラスト:一日一種(@Wildlife_daily
BIRDER公式サイト(BIRDER.jp

BIRDER7月号「絶滅の危機に立たされた鳥たち」特集もくじ

レッドリストって何だろう?(文:小林さやか)
“絶滅まで秒読み”の鳥も!? 日本の絶滅危惧鳥図鑑(文:BIRDER イラスト:一日一種)
絶滅の危機は,すぐ近くでも起きている!「身近な絶滅危惧種」
  シマアオジと同じ道を辿ることになるのか? カシラダカ(文:尾崎清明)
  浜辺の身近な鳥が減り続けている理由 シロチドリ(文・写真:守屋年史) 
絶滅危機からの復活 光明が見えはじめた鳥たち
  野生絶滅からの復活,カギは水田にあり トキ(文・図・写真:佐渡島鳥類研究所)
  乱獲から保護へ,新繁殖地は定着するか アホウドリ(文・図・写真:出口智広)
  再び日本の空へ,国際協力が生んだ復活劇 シジュウカラガン(文:呉地正行)
  シマフクロウのすむ森を守るために~皆で知って皆で守る,協働の輪~(文・写真:菅野正巳)
約20年間でゴイサギの分布が半減? 全国鳥類繁殖分布調査から見えてきた今後の動向が心配な鳥たち(文:植田睦之)
ライチョウ保護最前線(前編)(文・写真 : 戸塚 学)
最も身近なアホウドリ観察地 東京~八丈島航路(文・写真:廣田純平 協賛:富士フイルム株式会社)
 
 
 

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BuNa編集部

株式会社 文一総合出版の編集部員。生きもの、自然好きならではの目線で記事の発信をおこなっている。

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