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  • 虫

10/1 2019

生きもの好きの間で噂のカメラ、TG-6で手すりや公園の虫たちを撮影してみた

昆虫や植物を撮影する人たちがこぞって使用している、オリンパスの「TG」というシリーズのカメラをご存知でしょうか。
このTGシリーズの中でも2019年夏に発売されたばかりである「Tough TG-6」を、『手すりの虫観察ガイド』の著者・とよさきかんじさんに使用してもらいました!

交尾するトホシテントウ。リア充ならぬリア虫である

私が虫の撮影を始めたのは2014年の初夏。
大人になるに連れて遠ざかってしまった虫と和解するきっかけを探していた時に、OLYMPUSのTG-3というコンパクトデジカメの噂を耳にしました。
 
「水の中でも撮れる」「カメラ内で深度合成※1ができる」
「もっとも昆虫撮影に適したコンデジ※2!」
 
※1 合成によりピントの合っている範囲を広げて撮影する機能(後述)
※2コンパクトデジタルカメラの略称
 
 
くわしいことはわかりませんでしたが飛びつくようにカメラを購入し、胸をときめかせながら地元の公園へ出かけてみました。
草むらに向かってこわごわレンズを向けると、そこには初めてのマクロ(超拡大)の世界。肉眼でははっきりと見えない虫もカメラで撮ることでぐっと距離が縮まる楽しさ。私はふたたび、昆虫の世界にのめりこんでいきました。
 
あれから5年、フィールドは海外まで広がり、カメラはどんどん重装備に。
今回は初心に戻るつもりで、この夏に発売されたTG-6を持って同じ公園に出かけてみました。
 
TGシリーズの良いところはその手軽さとタフさ。
むきだしのままポケットにつっこんで、ふらりとフィールドに出かけられます(ただし液晶画面だけはキズ防止のため保護フィルムを張った方が安全です)。
 
私は虫撮りをする時は必ずFD-1というフラッシュディフューザーをカメラに装着しているのですが、これを使えばフラッシュの光が強く当たり過ぎて虫に影ができてしまうのを防いでくれます。虫を撮影したい方にオススメ。

FD-1を装着したTG-6

FD-1を使用して撮影した樹液酒場

TG-6で虫を撮るコツはただひとつ。虫の近くまでカメラを寄せることです(笑)
もちろんカメラのズーム機能も充実していますが、後から見返した時に「おお〜!よく撮れてる!」と叫ぶためには、息を殺して小さな虫へ近づく必要があります。
 
はじめは難しくて、「あっ…飛んじゃった…」「葉の裏側に回っちゃった…」「ポトリと落ちちゃった…」の連続ですが、しつこく虫を探していると必ず動きの少ない「撮りやすい子」がいるはずです。

命が尽きそうなヒグラシ。大きな虫から挑戦

木陰でクスノキの幼木にとまったアオスジアゲハを発見!
どうやらひと休みをしているようです。まずは遠目で一枚。

膝歩きでジワジワにじり寄ってもう一枚。

さらにズームでもう一枚! お〜楽しい!

近くを探すとアオスジアゲハのイモムシ(幼虫)もいました。

TG-6は小型で軽量なので、片手で持ったまま草むらに突っ込んで撮影することもできます。この日はススキの葉裏でペラッペラの葉っぱみたいな虫を見つけました。

エビイロカメムシの幼虫。約10mm

動き回る虫には、プロキャプチャーモードもおすすめ。シャッターを全押しする瞬間の0.5秒前から記録ができるので、飛び立つ一瞬など決定的瞬間が撮れる確率がぐんと上がります。

第1脚がたくましいカラスハエトリ。約6mm

つい焦って忘れてしまいがちですが、虫探しの基本はゆっくり丁寧に観ること。
みんなが行き過ぎてしまう風景の中で虫を見つけるとテンションが上がります。

幹のくぼみに身を隠すカタシロゴマフカミキリ

トサミズキの実に集まるアカスジキンカメムシの一齢幼虫。約2.7mm

TGシリーズの特性として、撮影時に深度合成ができる機能があります。
マクロ撮影をするとピントが一部分しか合わないことが多いのですが、ピントの深さを自動的に変えた3〜10枚の写真をカメラ内で合成して、被写体の手前から奥までピントが合っているくっきりはっきりした画像にしてくれます。

通常のマクロモードで撮影したムラサキホコリ属の変形菌

深度合成撮影(4枚)

深度合成は被写体が動いていると、おもしろブレブレ写真になってしまうので、なるべく動きの少ないここぞ! という時にチャレンジすると良いと思います。
 
あーとかうーとかいいながら、シャッターを切っているとあっという間に5時間が経過。カメラというツールを通すと、ごちゃごちゃした草木が作る緑色のノイズが、生き物の生命があふれる豊かな世界に早変わりすることを実感しました。

クモの糸に絡め取られたリュウキュウツヤハナムグリ

拙著『手すりの虫観察ガイド』の中でもTGシリーズを紹介していますが、私はこれまでに10台以上のTG機を虫好きの方々にオススメして買わせています(笑)。もちろんメーカーさんに頼まれた訳ではなく、自分が良いと思っているからです。
つい先日も職場の若者に、自分のTGを貸してフィールドを回ったところ、翌週には新型機を購入していました。
 
もう少し生き物と距離を縮めたい、近所の風景をフィールドに変えたい、…そんな気持ちを持つ人のエントリー機として、TG-6は最高の一台だと思います。世界の解像度を上げるマクロの世界(沼)に足を踏み入れてみませんか?

コンパクトデジタルカメラ Tough TG-6
 

手すりの虫観察ガイド

手すりの上にいる虫300種を集めた日本初のガイドブック! 豆知識やイラストが豊富で、虫探しの入門書としてもオススメ。

Author Profile

とよさき かんじ

1975年、埼玉県生まれ。多摩美術大学絵画科油画専攻卒。「日本野虫の会」という屋号で嫌われがちな虫の魅力を紹介しながら生物多様性への興味をつなげる活動をしている。テーマは「虫と和解せよ」。著書に『くるりん!ダンゴム』(岩崎書店)『すりの虫観察ガイド』(文一総合出版)『街なか葉めくり虫さんぽ』(ベレ出版)がある。
Twitter:日本野虫の会 @panchichi3
活動や観察会について:https://note.com/yachunokai

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