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10/24 2019

秋の初心者バードウォッチングガイド

晩秋〜冬はバードウォッチングの季節

読書の秋、芸術の秋と、何をするにもよい季節だ。
そして、秋はバードウォッチングを始めるのにもよい時期である。
バードウォッチングは鳥がいればいつでも、どこでも楽しめるが、秋以降は特に鳥を見つけやすい。
初夏〜夏は木々の葉が茂り初心者には鳥が見つけづらいが、秋が深まると木から葉が落ちて姿を見つけやすくなるのだ。さらに、食物を探して地面の虫を探していたり、水辺ではカモ類が群れで集まったり、猛禽類も獲物を探して山から降りてくるため見つけやすい場面が増える。
 
では、具体的にはどんなところに行けば秋や冬の鳥に会えるのだろうか。
今回は日本で唯一のバードウォッチング専門誌『BIRDER』の編集部が、冬の探鳥スポットの中でも特におすすめする「ヨシ原」の見かたを紹介しよう。

ヨシ原って?

ヨシ原(アシ原)の「ヨシ」はイネ科の背の高い植物のこと。よく河川敷や河口部、大きな池や湖の周辺などに広がっている。
広大なヨシ原をもつ探鳥地として有名な場所といえば、渡良瀬遊水地(栃木県)が挙げられる。また、自分の家の近所などに川があって、背の高い草がぼうぼうに茂っている場所があれば、それがヨシ原だ。
 

背の高いヨシが茂るヨシ原。ここを隠れ家にして、多くの鳥が集まってくる。

ヨシはこのような湖沼のそばに群生する。ヨシ原の周囲をぐるっと歩きながら、水上にも目を向けてみよう。

ヨシ原の鳥図鑑

背の高いヨシは小鳥たちの隠れ場所になるため、季節を問わず小鳥に人気の優良物件だ。
夏鳥たちはヨシを子育てに使い、春〜夏にはさえずりのコーラスを聞くことができる。夏の終わりから初秋ごろにかけてはツバメのねぐら入りを見ることができるかもしれない。
冬は夏鳥のようなコーラスは聞かれないが、生い茂った隠れ家として優秀で食物も豊富なヨシ原は冬鳥たちの宿になる。開けた場所での狩りを好む猛禽類たちも、まばらなヨシ原や周辺の農耕地などによく集まる。
 
では、実際にどんな鳥がくるのか少しだけ紹介していこう。

オオジュリン
スズメ目の仲間の鳥。秋から冬にかけて小さな群れを作って行動する。背中のシマシマ模様がトレードマーク。オオジュリンは夏は東北や北海道で繁殖し、冬になると本州以南に現れる。
ヨシ原を歩いているとき、「パチパチ」と聞こえてきたら、その方向を探してみよう。ヨシについたカイガラムシという虫を食べている姿を見られるかもしれない。
同じようなスズメに似た小さな茶色い小鳥はヨシ原に多く現れる。鳴き声や模様に注目して見分けよう。

モズ
ずんぐりした体つきに、長い尾羽が特徴。周辺の枝などに獲物を突き刺す「はやにえ」で有名な鳥。
9月ごろから甲高い「キィーキィー キチキチキチ」という声がよく目立つ。これはなわばりをアピールしている声で、高鳴きという。11月ごろにはなわばりが決まり、高鳴きはしなくなる。
トカゲやスズメを獲物にすることもあり、小さな猛禽類とも言われる。
高いところからぱっと飛び降りて、元の枝に戻ってきたときは口元に注目。獲物をくわえているときがある。

ジョウビタキ(オス)

ジョウビタキ(メス)

ジョウビタキ
冬の渡り鳥でも特に人気が高いのがジョウビタキ。ぴょこんとおじぎをする仕草がかわいらしい。
オスはキモノの紋付のような白い斑があるため、「紋付鳥」と呼ばれることもある。メスは地味に見えるが、つぶらな眼をしたかわいらしい顔でファンになる人が多い。
ヨシ原に限らず雑木林や公園などにもよく来る身近な鳥。毎年同じ場所をなわばりにするので、今年見つけたら来年も同じ場所をチェックしよう。

カワセミ
一時期は「清流の宝石」などと呼ばれていたが、現在は多くの水辺で見かけるようになった。水辺に近いヨシ原は、カワセミをよく見かけるポイント。
鳴き声は自転車のブレーキ音によく似た甲高い音。水面から突き出た杭や枝などによくとまっている。
カワセミの雌雄は、くちばしの色で見分けることができる。写真のカワセミは下のくちばしが赤いのでメスだ。一方、オスは下のくちばしも黒い。
「口紅をしているほうがメス」と覚えるといいだろう。

オオバン
黒い体に白いお面のような顔、眼は真っ赤という個性的な見た目をしている。
よくカモに混じって泳いでいるが、カモの仲間(カモ目カモ科)ではなく、ツル目クイナ科の鳥だ。
カモとの違いは足の水かきで、カモは指の間が膜で繋がっているのに対し、オオバンは平べったい水かきが指一本一本についている。

カルガモ
東京都のビルで子育てをして話題にもなった、身近なカモの1種。
夏の子どもを引き連れて歩いたり様子や、泳いだりする様子で和ませてくれる。
一年中いる留鳥だが、冬になると越冬で渡ってくる個体と一緒になって、大きな群れを作る。

マガモ
鮮やかな緑色の頭が特徴。マガモはカルガモと違い冬のみ日本にやってくる。そのため、北海道を除き夏に見ることは少ない。
アヒルはこのマガモが原種。
越冬中に雌雄でペアを作り、春になると連れ立って繁殖地へ渡り、子育てをする。
ほかにも、カモ類は個性的な姿をしたものが冬には多く渡来するので、自分の近くの水辺にどんなカモがいるのか調べてみるのも楽しい。

ノスリ
草原や農耕地などの開けた場所を好むタカの仲間。獲物はネズミやヘビなどで、ホバリングから急降下する狩りを行う。
トビとよく似ているが、トビの尾羽はバチのような形で、ノスリは丸く見える。
ノスリと同じくヨシ原を好む猛禽類にチュウヒがいる。
 
 
ヨシ原に生えている植生や、周辺の環境によって集まる鳥は変わってくる。
自分の家の近くのヨシ原にはどんな鳥がいるのか、秋の散歩を楽しんでほしい。

バードウォッチング専門誌 BIRDER

『BIRDER』は日本で唯一のバードウォッチング専門誌。
探鳥地の紹介や、鳥の詳しい生態、探鳥会レポートや機材の紹介など、バードウォッチングに役立つ情報が満載!
 
最新号のBIRDER2019年11月号では、野鳥写真を撮る際に画面を組み立てる考え方や、公園で野鳥撮影を楽しむためのステップ、プロカメラマンのおすすめ機材など、実際に使えるテクニックをぎゅっと集めた。
 
また、「観察、撮影テクニックとしてのマナー講座 〜鳥のストレスサインを見抜くには」では、野鳥が警戒しているサインを紹介。「こんなに近くでサービスしてくれている!」と喜んでいた写真が、実は鳥にとっては大きなストレスになっているかもしれない。野鳥を撮影のときには心に留めておいてもらいたい大切なポイントだ。


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BIRDER公式サイト(BIRDER.jp

Author Profile

BuNa編集部

株式会社 文一総合出版の編集部員。生きもの、自然好きならではの目線で記事の発信をおこなっている。

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