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12/16 2019

自分の力で野鳥を探す!バードウォッチング5つのコツ

世界には約1万種、日本には約650種の鳥がいると言われています。全種類は無理でも、なるべくいろんな鳥が見てみたいな…という方も多いのではないでしょうか?
そこで、鳥専門ツアーガイドである中野泰敬さんに、初めてでも実践できる野外で鳥を見つけるコツ5つを教わってきました!
(本記事は2019年11月16日のイベント「『季節とフィールドから鳥がわかる』重版記念トークイベント」の内容を元に作成しています)

ハンノキの実を食べるマヒワ

①まず、耳を十分働かせる!

中野さんは、バードウォッチングを始めて約40年! そんな中野さんが野鳥を見つけるうえで一番大切だというのは、「まず耳で聞くこと」。
 
中野さん「鳥を見つけるときの80%は耳で見つけています。鳥は姿が見えないので、まずは鳴き声やさえずりで何がいるのか見当をつけられるようになるのが、大きなポイントです」
 
とはいえ、バードウォッチング初心者にとって鳴き声を覚えるのは大変。ほとんどの鳥の鳴き声がわかるという中野さんはどうやって覚えたのでしょうか。

鳴き声と鳥の名前を覚えるコツは、「人に聞かない」!

「鳴き声と名前を覚えるのに一番大切なのは、人に聞かないこと。それと、鳥の鳴き声のCDなんかも、流しっぱなしにしないこと。ツアーガイドをやっているとみんな僕に『この鳴き声何?』って聞くんですけど、3歩歩いたらもう忘れちゃう(笑)。CDも、『オオルリ。 ピールリー…』なんて鳴き声の音声の前に鳥の名前を言ってくれるでしょう。だから、覚えた気になってしまうんです。CDを聞くときは鳥の声だけ聞くようにして、何だろう?と考えた方が覚えるんですよ」
 
なるほど、確かにそう言われてみれば覚えた気になってしまっているかも……。
 
「人に聞く前に、自分でなんだったかな……といったん考えてみる。そうすると脳が働きますし、『●●●●かな?』と鳥の名前を出して聞いてみれば、こちらも「違うよ」と返事できる。『この鳥はなんですか?』って聞かれたら、答えちゃいますからね(笑)。自分で思い出してまた考える、ということを繰り返せば、自分で記憶しやすくなります。
だから鳥のCDは種名の部分を消して聞くといいですね。僕は自分で鳴き声の部分だけ録音し直したものをいつも聞いています」
 
「今は、インターネットで情報が出たらそこに見に行く、という人が多いのですが、それでは自分で見つけるという能力は養われません。ぜひ鳴き声を覚えて自分で探し出してください」

新緑の森でさえずるキビタキ

②目で景色の中の違和感で見つける

規則的な流れを壊している物に注目する

耳で見つけると言っても、やはり気になるのは景色の中からどうやって探すのかということ。
 
「こんなふうに電線があるとしますよね。そしたら、たわんでいる線の先や、違和感のあるシルエットを探します。もしかしたら鳥かな……?と、鳥がいる前提で見てみることが大切です。木の枝先も同じで、最初は枝先にある葉っぱや他のものを鳥と見間違えるかもしれませんが、鳥を発見する目を養えます」

チョウゲンボウとハクセキレイがとまっていた

枝にコブのようなものが、鳥かな?

双眼鏡で見るとモズだった

「鳥の行動もよく見てみましょう。たとえば小鳥が小首をかしげていたら可愛いですよね。でもそれはいったん置いておいて、空を見上げてみましょう。猛禽類が見られるチャンスです。鳥は基本的に片目ずつでものを見ているので、小首をかしげるということは真上の空を見ているんです。猛禽類は小鳥にとって敵なので、空の上を気にしているんですね」

防波堤で休んでいたトウネンが小首をかしげる

畑で餌を取っていたツグミが突然小首をかしげた

上空を舞うハイタカ

③鳥が何を食べていて、どこにいるのが好きかを知る

「場所と木の種類を覚えておくことも鳥発見につながります。たとえばヤドリギがあったらレンジャク類、エゴノミはヤマガラ、イチイはゴジュウカラが好んで実を食べる、というように種類ごとに好きな木の実があります。この鳥が見たい!というときは、その鳥がどこに住んでいてどの食べ物が好きか覚えておきましょう」

一本の木にたくさんのヤドリギ。レンジャクが来るかもしれない

エゴの実をくわえるヤマガラ

イチイの実を獲りに来たゴジュウカラ

ピラカンサの実を食べるヒヨドリ

④いつ見られるか、時期を知る 基本の分け方:留鳥、夏鳥、冬鳥、旅鳥

「日本で見られる鳥はいつでもどこにでも約650種いるわけではありません。季節や場所によって違う、と覚えておけば見つかる確率が高まります。まずは留鳥、夏鳥、冬鳥、旅鳥の4つの分け方を覚えましょう」
 
・留鳥(りゅうちょう)
スズメ、キジバトのように1年を通して見られる鳥。
 
・夏鳥(なつどり)
ツバメのように冬は日本より南の国にいて、春〜夏に日本に渡ってきて繁殖する鳥。
 
・冬鳥(ふゆどり)
ハクチョウ、ツグミのように日本より北の国で繁殖して、秋〜冬に渡ってきて冬を越す鳥。
 
・旅鳥(たびどり)
シギのように春と秋に日本を中継して渡っていく鳥。

⑤鳥に逃げられない行動をする

「実際にガイドをしていて、外では靴をひきずる音や落ち葉がカサカサする音があると鳥の声が聞こえにくくなります。なるべく足をあげて歩きましょう! オーバーやズボンのシャカシャカ音でも、鳥の鳴き声が聞こえにくくなります。」

秋の林でバードウォッチング

「また、枝を踏んだり熊鈴の音など突然聞こえる大きな音が鳥は苦手で、逃げてしまう原因になります。おしゃべりは、意外と鳥の声にもかぶらないので僕はOK派。
鳥に近づくコツは、鳥から見えない位置に隠れてから距離をつめること。鳥がいたら木や物に隠れて、鳥が見えない状態でスーっと近くんです。そして物陰からそっと顔を出して見てみると、案外逃げませんよ」

人工物を利用して鳥に近づいて撮影

自分の力で見つけるのが楽しい!

中野さん流・鳥を見つける5つのコツをまとめると、
 
①まず、耳を十分働かせる
②目で景色の中の違和感で見つける
③鳥が何を食べていて、どこにいるのが好きかを知る
④いつ見られるか、時期を知る
⑤鳥に逃げられない行動をする
 
「ネットの情報で鳥を見るのは簡単ですが、自分であれこれ考えて鳥を探すのはとっても楽しいですし、探し出した時の感動は大きなものです。ぜひ、自分の力で鳥を探してみてください!」
 
 
まだまだある中野さんのバードウォッチングのコツは、『季節とフィールドから鳥が見つかる』に多数掲載!

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Author Profile

中野 泰敬

学生時代に野鳥に興味をもち、野鳥写真を扱うフォトエージェンシーに入社。その後、福島市小鳥の森のレンジャーを経験しながら野鳥カメラマンを目指す。現在は(株)ワイバードの専属ガイドとして、日本各地にとどまらず、世界各国を巡りバードウォッチングのガイドをしながら写真を撮り続けている。(中野 泰敬の自然見聞録、 instagram
 
写真は、種類を多く撮影するよりも、季節感のあるほのぼのとした写風が特徴。主な著書に『野鳥ハンドブック』(新星出版社)、『1年で120 種類の野鳥に出会える本』(文一総合出版)、『日本の野鳥 識別図鑑』(共著・誠文堂新光社)など。

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