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植物

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5/22 2020

家から半径100mでたのしむ! そこらへんの植物観察のすすめ

「植物観察」と聞くと、ちょっとハードルが高そう…なんてイメージはありませんか? じつは、家のまわりやそこらへんの植物を見るだけでも、立派な「植物観察」になるんです!
 
書籍『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』の著者であり、まちなかの植物に詳しい鈴木純さんに、「そこらへんの植物観察」のたのしさや植物のおもしろポイントを紹介していただきます。

 
みなさまこんにちは。植物観察家の鈴木純です。ふだんは、徒歩10分の道のりを100分かけてあるく、まちの植物ガイドを行っています。今年も良い季節なので、さぁどんな観察会があったかなと手帳をひらいて驚きました。新型コロナウィルスの影響を受け、清々しいほどに仕事がありません。それでは、暇を持て余しているのかというとそうでもなく、むしろとっても忙しい日々です。なぜでしょうか。ずばり、そこらへんに植物があるからです。

毎朝の日課はいつもと変わらずに

朝起きてご飯を食べたらまず玄関先へ移動。ここには私が毎日定点観察をしているナンテンの芽があります。

これが4月10日の様子。一番右端に、少し顔を出してきた芽が見えます。

9日後。葉っぱが伸びてきました。

5月7日。おぉっ! ひとつの芽のなかにこんなにもたくさんの葉っぱが…! 真ん中からしゅっと伸びてるのは花の芽ですね。どんな花が咲くのかたのしみです。

と、こんな風に過ごしていると、玄関先だけでも長期間たのしんでいられるのが植物観察の良いところ。定点観察をしている植物がほかにもたくさんあるので、近所でそれらを巡回するだけで大忙しです。

ちなみに、これがナンテンの若芽のアップ。凄い雰囲気です。植物は時として無料の芸術も見せてくれるので、なんだか得した気持ちにもなりますね。

遠出が出来なくても、近くの植物を見ているだけで日が暮れるので、もしかしたらこれ、新型コロナウィルス時代を乗り切るのに必須なスキルかも知れません。だってわたし、なんだか毎日変わらず幸せですから。
 
ということで、今回は「まちなか」でもたのしめる植物観察とはどのようなものかご紹介します。植物のことに詳しくなくても大丈夫です。家から半径100mの自然をたのしんでみましょう!

まず、そこらへんの植物に気付くことから

そんなこと言っても、それって自然が多い場所の話でしょう? そう思った方にまずお伝えしたいことがあります。植物、絶対に「そこらへん」に生えています。
 
たとえば…

ブロックの隙間に生きるセイヨウタンポポやヒメムカシヨモギなどを見つけたり

街路樹の植え升にオランダミミナグサがたくさん生えているのを発見することがあります。

何気ない空き地に行けば、カタバミの仲間やチチコグサの仲間、ノゲシにオオアレチノギクなど数えきれないほどのたくさんの種類の野草が生えていますし、

たまにこんなところからホトケノザが出てきて驚くこともあります。

いかがでしょうか。こういう場所なら皆さんのお住まいの近くにもありませんか? ぜひ一度、近所で植物が生えている場所を探してみてください。少し歩いただけで想像以上に多くの植物と出会うことができるはずです。
 
まずは植物が生えている場所に気付く。ここからはじめてみましょう。

次に、そこらへんの植物に気持ちを寄せてみる

そして、ここが大切です。せっかく植物に気が付いても、ふーん、草ね。と見下ろして通りすぎるだけでは、その植物はあなたの世界にいないも同然。草を見つけたらまずは腰を下ろしてみましょう。これが基本です。
 
たとえば上から見下ろしたドクダミは、

あっ、なんか花が咲いてるかな? くらいにしか思えませんが、ドクダミの高さまで顔をおろして近付くと

な、なんという美しい咲きはじめの姿でしょうか…!

と感動に満ちた光景に出会うことがあります。そこらへんの植物と目線をあわせて思いを寄せること、ここから観察がはじまります。

つづいて、自分なりに観察してみる

せっかくなのでドクダミの話を続けます。さきほどの咲き始めの写真、よく見るとなんだか黄色いブツブツがたくさんあったことにお気付きでしょうか?

これです。よくみると黄色の粒々に混じって白い部分もあるようです。

白いものは先端が3つに割れているので、この形、さては雌しべだな。ということがわかります。ということは、そのまわりに3つついてる黄色は雄しべ? えっ、それってつまり…

ドクダミの花は、これがひとつの花ではなくて、小さな花がたくさん集まってひとつの花に見えていたということ? わぁ、そんなつくりをしていたなんて、ドクダミも面白いじゃないか。

でもそうなると、この白いひらひらはなんなの?という疑問が出てきます。そんな時はすかさず図鑑を取り出して調べてみましょう。ドクダミのページを読むと、ふむふむ、なるほど。これはどうも「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれるもののよう。花びらではなく、葉っぱが白く変化したものなのだとか。えっじゃあ花びらは? と思いこれも調べてみると、ドクダミには花びらがないのだとか!

え〜っ、おもしろい。なんだか意味がわかったようなわからないような話だけどおもしろい!

さらに、自分なりに探求する

こんな調子でひとつの疑問が次の疑問をよび、いくらでも続いていくのが植物観察のたのしさです。
 
見て観察するだけでもたのしいですが、条件が許せばさらに探求していきましょう。というのも、私にはずっと疑問があったのです。

ねぇ、なんかあなた…、増えてきてない? 増えてるよね、うん、絶対増えてる。あんなに刈ったり抜いたりしているのに。

よし、せっかく仕事も無いことだし、今日は積年の謎を解き明かしてみよう。と、どうせ抜くので、ドクダミの根っこを観察してみました。

まずこれがドクダミの地上部。

つづいてここから下が地下部。白い部分が伸びています。さらに下に進むと、

おぉ、繋がっている…!

だからか。だからだったのか、ドクダミよ。と、これで疑問は解決。ドクダミの根っこに見える部分、これはじつは根っこではなく「地下茎(ちかけい)」と呼ばれるものだったのです。
 
あっ、もしかしたら「へぇ、茎なのね」と、さらっと聞き流してしまいそうになるかもしれませんが、これ、とっても大事なことなんです。
 
なにが大事って、根からは「芽」は出ませんが、茎からは「芽」が出るんです。
 
つまりドクダミは、地上部を引っ張って抜かれても、地中に残る地下「茎」から新たに「芽」を出して、また地上に現れることが出来るというわけです。

今回の記録、地下茎の深さ50センチ。

抜けば抜くほどにドクダミが増えるのは錯覚ではなく、抜けば抜くほど地下茎がバラバラになっていき、それぞれが新たな地上部を作るので、抜けば抜くほどドクダミは本当に増えていくのです。なんという逞しい植物でしょうか。
 
こうなってくると、もしかしてドクダミは人間に抜かれたいと思っているんじゃないかと想像してしまうほどですね。

それでは、観察してみましょう!

「植物」とひとくちに言っても、それは長らく世代を超えてきた命です。この過酷な世界を生き延びるために様々な工夫をしているので、ひとつの植物を観察しつくすということはいつまで経っても起こり得ないわけですね。
 
さぁ、それでは最後にわたしから皆さんへ、答えを提示しない観察テーマを5つお届けします。これから夏にかけて「まちなか」で見られる植物をお題にしますので、実際に観察して答えを確かめてみてください。
 
①カタバミの仲間

ハートが3枚ついた葉っぱの形が特徴的なカタバミの仲間たち。

花が終わって実になるとこんな形になります。これのパンパンに膨れているものを見つけたら、指でちょっと摘まんでみてください。なにが起きるでしょうか?

ヒントはこの摘まんだあとの写真。上の写真と見比べてなにが変わったか見てみてください。

②オオバコ

言わずとしれたオオバコもよく見ると、花の形に2種類あるのがわかります。

これと

これ。

この2つを見つけていただき、それぞれの花が一体どんな状況なのか考えてみてください。ヒントのキーワードは「雌雄異熟」です。
 
③ナツヅタ

壁を覆い尽くすナツヅタ。遠くからではなく、近くで見てみると、

ん、吸盤…? これはいったい何なのでしょうか。軽く触ったり引っ張ったりして確かめてみると面白いです。

④ハゼラン

一度知ると、まちなかで何度でも出会えるハゼラン。

ピンク色が可愛いですが、じつはこれ、花が開く時間が決まっています。さぁ何時に開くでしょうか?

⑤マテバシイ

6月頃になると、こうしてマテバシイの花が咲きます。

マテバシイといえば、秋に細長いどんぐりが成る樹木ですが、このどんぐり、どのようにして花から大きくなっていくかご存知でしょうか? ヒントは、どんぐりは、1年で大きくなるとは限らない。です。ぜひ近くの公園で観察してみてください。

植物を観察する。という行為は本当に自由そのものです。見てたのしむだけですので、現時点での詳しさは必要ありません。もしかしたら、植物の名前を知らなくたって出来るかもしれません。この外出自粛を活かして、自分なりの植物観察をはじめてみてはいかがでしょうか?見慣れたまちの、知らなかった命の世界が待っているかもしれませんよ。
 
鈴木さんの著書はこちら!
そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』(雷鳥社)
植物観察家の鈴木純さんが、まちの植物にずんずん近づいて、個性的な見た目や生き方、謎解きなどをぶつぶつ言いながら楽しみます。

 
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Author Profile

鈴木 純

すずき じゅん
植物観察家。東京農業大学造園科を卒業後、中国で砂漠緑化活動に従事。帰国後、日本中の植物を見てまわり植物ガイドとして独立。街の植物観察会を中心に、保育や地域おこしなど幅広く活動。著書に『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』(雷鳥社)。

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