ハーブを使ったお茶や料理はたくさんあるが,その「ハーブ」の種類に固定概念を抱いてはいないだろうか。一体どんなものが「ハーブ」で,どういう活用方法があるのか,自由な発想で編み出されたレシピとともに紹介しよう。野草以外にスーパーでも手に入る食材もあるので,ぜひ実践してみてほしい。
(この記事は『ポケット図鑑 なんでもハーブ284』(文一総合出版)からの引用記事です。文章・写真:山下智道)
よく私の講座 ・ 講演会で皆さんにそう問う。すると、「え〜と、ラベンダー、タイム、ローズマリー ?」などの答えがほとんどである。まれに日本の野草である「ヨモギ、ユキノシタ、タンポポ」などと答える方がいらっしゃる。
結論、答えはすべて正解である !
しかし、どうしてそれがハーブなのかが実は重要である。
あなたにとってラベンダーがどうなのか? ヨモギがどう作用するのか?でその答えが決まる。
ヨモギなんて、抜いてゴミ袋に入れて投げ捨ててしまえば、それは単なる「雑草」になってしまう。ところがヨモギを細かく刻み、袋に詰めて湯船に浮かせたら、それは「ハーブ」になるのではないか。
つまりハーブとは、ライフスタイルに彩りや潤いを与えるなど、何らかの形で活かせるもの、そしてちょっとした豊かさ、幸福感を与えてくれるものだと私は思っている。
エノコログサ
エノコログサの花
別名:ネコジャラシ
利用部位 : 葉、茎、種子
注意 : 熟した株を使用する。
北海道〜九州に分布する一年草。アワの原種とされる。俗に言う猫じゃらしのことで仲間が多く、オオエノコロ、キンエノコロ、コツブキンエノコロ、フシネキンエノコロ、アキノエノコログサ、ハマエノコロとあり、粒の長さ2.2mmと本種が一番小さい。
メモ : 個人的に一番美味しいのは、粒々感があるキンエノコロだと思う。脱穀しなくても美味しく食べられる。葉も茎も乾燥させてティーにすると、後味がほんのり甘くて美味しい。
●エノコログサのクッキー
薄力粉50g、エノコログサの果実大さじ2、メープルシロップ大さじ1、水大さじ1
すべての材料をボウルに入れて混ぜ、手で成形してクッキーの表面に本種の果実をつける。180℃のオーブンで様子を見ながら15分〜20分焼くと完成。
オニユリ
ユリ根
別名:百合(びゃくごう)
利用部位 : 鱗茎
注意 : 野生種は掘り起こさないこと。
中国原産とも言われ、北海道〜九州に帰化する多年草。スーパーや八百屋で販売されているユリ根には本種の鱗茎も多い。近縁のコオニユリと見た目が非常に似ているが、本種が葉腋にむかごを作るのに対し、コオニユリは種子を作って繁殖する。
メモ : ユリ根には、本種以外にコオニユリ、ヤマユリ、カノコユリがあるが、乱獲の影響で野生種が数を減らし、近年ではユリ根用の改良型が栽培 ・ 販売されている。ユリ根を蒸かして、モンブランのようにスイーツも作れる。
●ユリ根のポタージュ
〈2人分〉ゆり根100g、バター10g、水150㎖、スープの素小さじ1、牛乳200㎖、塩コショウ少々
鍋にバターを溶かし、ゆり根を炒め、すき通ってきたら水とスープの素を加え弱火で煮る。スプーンなどでつぶし、牛乳を加えて完成。
キンモクセイ
別名 : 桂花
作用 : 芳香性健胃、リラックス
利用部位 : 葉
注意 : 採取する場合は小さい虫やゴミを取り除く。
中国原産の常緑低木。秋の季語となっており、秋口にオレンジ色で香り高い花をつけ、季節の到来を感じさせてくれる。中国では伝説、詩歌、絵画などによく登場し、愛らしい花を集めて密閉保存し、残り香を楽しむという。
メモ : 和名の由来は、樹皮の様子がサイ(犀)の皮膚に似ていて、金色の花を咲かせることから。材は非常にかたく重たい。葉を乾燥させティーにすると香ばしくて美味。
●キンモクセイのシロップ
生のキンモクセイの花10g、てんさい糖100g、レモン汁適量、水適量
てんさい糖と水を小鍋に入れ、火にかける。ぐつぐつしだしたら中火にし、キンモクセイの花を入れ、とろみが出て液体が黄色に染まり始めたらレモン汁をかけ、冷蔵庫で冷やせば完成。レアチーズケーキなどに使う。
グレパラリーフ
別名 : 朧月(おぼろづき)
作用 : 疲労回復、抗酸化
利用部位 : 葉
注意 : 葉に丸みがあるエケベリア‘七福神’と間違えないように。
メキシコ原産の常緑多年草。という名で園芸種としても親しまれている。また近年では日本でもまれにデパートなどの八百屋で取り扱うようになった。シャキシャキした食感に青リンゴに似た味わいがくせになる。
メモ : 葉は灰色がかった色をしているため、海外ではゴーストプラントと呼ばれることもある。近年、住宅街などで野生化している。
●グレパラリーフの塩麹漬け
グレパラリーフの葉10枚、塩麹大さじ3
ジップ袋に本種と塩麹を入れ、塩麹が全体にいきわたるようにもむ。冷蔵庫で1晩置き、塩麹をさっと洗い流して完成。また葉をさっと湯通しして、水キムチにしてもグレパラリーフの酸味が活きてくる。
別名 : ホンユズ
作用 : 疲労回復、抗酸化、風邪予防
利用部位 :果実、種子
注意 : 肌が敏感な人は果実を切らずに丸ごと使用する。
中国原産の常緑小低木。飛鳥〜奈良時代に朝鮮半島を経由して渡来した。本種はミカンの3倍ものビタミンCを含み、その香りや果汁は日本料理に欠かせない。冬至に入るユズ湯には体を温める以外にも、ユズの香りで邪気を払うという意味もあった。
メモ : 実がなるまで長くかかるため「桃栗三年柿八年、柚の大馬鹿十八年」と言われる。実際は3年ほどで収穫できる。
●ユズのペクチン
ユズの種子や皮のぬるぬるした成分の正体は、ペクチン質という食物繊維の一種。ビタミンCとの相乗効果で血行を良くする働きがあり、チンキにしてローションやハンドクリームに入れたり、お風呂に入れてもよい。また皮もきれいにむき取り、乾燥させ陳皮のように使用してもよい。
チンキ剤とは、ハーブをアルコール度数の高いウォッカやホワイトリカーなどに漬けて、有効成分を抽出した濃縮液のことである。水溶性成分と脂溶性成分の両方を取り出せるのが特徴だ。リキュールや果実酒はこの抽出法を利用している。
●材料
ハーブ約15g、40度のウォッカ(または 35度のホワイトリカー)約 100㎖、漬け込み用のガラス容器(200㎖程度)、保存用の遮光ガラス容器
●作り方
1 熱湯消毒した漬け込み用のガラス容器にハーブを入れ、ウォッカを入れる。
2 ガラス容器のふたを閉め、ハーブがウォッカによく浸るように振り、日付ラベルを貼って、冷暗所で約2週間保管する。
成分がしっかり溶出されるよう、1日に1〜2回程度容器を振る。
3 2のハーブを茶こしで除き、保存容器に入れ替えれば完成。
●ハーブを使用する前に
近年のオーガニックや自然ブームとともに「ハーブや野草=身体に良い」というイメージがある。もちろん私たちの身体や心を健康にする非常に効果的な素晴らしい食材だと私も思う。
しかし、どのハーブや野草でも自分自身の体質と相性が良いわけではないことを理解する必要がある。自身の身体の声に耳を傾け、ハーブの使用量、注意書きをよく読んで、バランスを考えてハーバルライフを楽しんでいただきたい。
ハーブを購入したり野草を使用する前に自分が何を買い、何を摘んだか十分に理解、把握しておく必要がある。
またハーブと医薬品の組み合わせやバランスによっては、相互作用により健康に悪影響を及ぼす可能性もある。妊娠中や授乳中の女性もハーブの詳細をしっかり確認し使用していただきたい。子供と共に楽しむ場合も、事前に専門家や医師に確認してから使用することをおすすめする。
●ハーブについてもっと知るならこの本!
『ポケット図鑑 なんでもハーブ284』
・おすすめのハーブ284種を掲載
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Author Profile
山下智道
福岡県北九州市出身。野草研究家・作詞作曲家・ヴォーカリスト。登山家の父のもと幼少より大自然と植物に親しみ、野草に関する広範で的確な知識と独創性あふれる実践力で高い評価と知名度を得ている。国内外で多数の観察会・ワークショップを開催。TV出演・雑誌掲載等多数。