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菌類・粘菌

fungi, Slime mold

  • 菌類・粘菌

12/10 2020

粘菌写真家が選ぶ! 個人的偏愛粘菌ベスト10

自然科学分野出版のスペシャリスト・文一総合出版が、満を持して、児童書の分野に参入するという。その第一弾となる「森の小さな生きもの紀行」という、粘菌、きのこ、コケ、3冊の写真絵本シリーズの、写真(粘菌のみ写真+文章)を担当させていただいた。
 先陣を切るのは粘菌だ。ぼくは、写真で食べていけるとは思いもしなかったのだが、写真家業も業務に掲げた2011年当初から、「きのこ・粘菌写真家」と名乗っているくらいに、粘菌への愛は深く人後に落ちない。
 粘菌の魅力は、何といっても、未熟な子実体(しじつたい。胞子をつくるための器官)の宝石級の美しさと、変形菌とも言われるとおりに、その生涯を通じてずっと形態を変えること、アメーバ動物の仲間なのに胞子で増えるという、生態の不思議さだ。
 粘菌の詳しい説明は、2020年12月12日発売の『きれいでふしぎな粘菌』をぜひご覧いただきたい(一応、子ども向けの写真絵本だが、粘菌に興味を持った大人でも十分に満足していただけるかと)。
 今回は、粘菌の外観、主に色や形態的な魅力をご紹介したいと思う。ご家族みんなでご堪能いただけたら幸いである。

第10位

クダホコリ
未熟な子実体は、鮮やかな赤色、あるいは、オレンジ色。成熟するにつれて、乾燥し、色はあせ、形はそのままで茶色の粉状になる。子実体は、先端が粒状、あるいは尖っている、細長い筒状のものがたくさん集まった集合体だ。

第9位

ダテコムラサキホコリ
未熟なうちは、柄を覆う白い被膜が印象的である。成熟すると柄から先の子嚢(しのう)の部分が、まるで金属のような美しい銀色にコーティングされる。子実体の高さは5mm以下なので、やや探しづらい。

第8位

ヘビヌカホコリ
ヘビやミミズや虫的なうごめきを感じさせるので、もしかしたら、このビジュアルが苦手な人もいるかもしれない。未熟な子実体は白く、成熟するにつれ、徐々に黄色く変色する。たまに人の手のひらより大きい個体もいる。

第7位

キイロタマツノホコリ
通常の白いタマツノホコリに比べると、「珊瑚形」「蜂の巣形」になりづらい。ツノホコリの仲間は子実体(端子体)の外側に胞子を形成するが、10倍くらいのルーペで観察するとはっきりと確認できる。

第6位

マンジュウドロホコリ
とある夕方、森を歩いていると、木に何やら金属状のものがくっついているのを発見。近づいてみると、なんと、粘菌の子実体だった! 未熟なうちは黄色い粒状で、成熟すると銀色に。やがて表皮が破れて胞子が拡散される。

第5位

オオクダホコリ
まるで誰かが明太子をこぼしたとしか思えない姿だ。未熟な子実体はピンク色で、しかも、幅がときに20cmくらいにもなるので、森の中ではよく目立つ。阿寒の森でよく見かけるおなじみの粘菌である。

第4位

アミホコリの仲間(おそらくフシアミホコリ)
森の中で、これほど美しい青にお目にかかる機会はそうあるものではない。腐朽の進んだ倒木の中から、青い変形体が這い出してきて、やがて青い子実体を形成する。成熟すると茶色系に変色するので未熟なうちに見つけたい。

第3位

ホソエノヌカホコリ
子実体の高さは2〜3mmととても小さいのだが、群生するし、未熟な子実体は鮮やかなオレンジ色なので、遠くからでもけっこう目立つ存在だ。美しく透明感のある未熟な子実体を見つけると、拡大写真を撮りたくなる。

第2位

ルリホコリの仲間
春、雪解けの大地に姿を現すことから、好雪性粘菌と呼ばれる。その名の通り、子実体はまるで金属のような瑠璃色をしているが、これは、昆虫などと同じ構造色である。粘菌界有数の美しさだと思う。

第1位

マメホコリ
直径は1cmほどだが、未熟な子実体はきれいなピンク色なので、森の中でもすごく目立つ存在だ。記念すべき初めて見つけた粘菌で、これをきっかけに、どんどん粘菌にハマってしまい、今に至るまで粘菌生活が続いている。

 いかがだったろうか。少しでも粘菌に興味をもった人がいたら、ぜひ、自分の目で探してほしい。街中でも、神社や公園など「緑」が多い場所へ行けば、粘菌を見つけることができるかもしれない(機会があればぜひ阿寒の森へお出であれ!)。本格的な粘菌シーズンは初夏から秋にかけてなので、冬のうちは、生態の理解に加えて、探す際のイメージトレーニングのひとつとして、『きれいで ふしぎな 粘菌』を活用してほしい。
 そして、2021年1月以降、順次刊行される、写真絵本「森の小さな生きもの紀行」シリーズの『いつでも どこでも きのこ』(保坂健太郎/著)、『あなたの あしもと コケの森』(鵜沢美穂子/著)も、加えて楽しんでいただけたら幸いである。

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Author Profile

新井文彦

6月から10月までの間は、北海道で、毎日森に通って、きのこや粘菌の写真を撮っています。冬の間は、群馬県で、年老いたメスの柴犬のはなさんと暮らしています。たくさんの人に粘菌を好きになってほしいです。『きれいで ふしぎな 粘菌』(文一総合出版)、『もりのほうせき ねんきん』(ポプラ社)ほか著書多数。

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