冬になると身近な公園や池、海など、水辺で見ることができるカモ。よく見かける頭が緑のマガモや、春になると子連れで歩く姿が微笑ましいカルガモではない、変わった模様や姿のカモを見たことはないだろうか?
日本で唯一のバードウォッチング専門誌BIRDER2015年11月号の「編集部厳選,この冬に見ておきたいカモ“BESTイレブン”」を引用して、独断と偏見でサッカーのポジションに当てはめた「出会えるとちょっとうれしい」カモ11種を紹介しよう。(解説:田仲謙介、写真:石田光史)
BIRDER編集部が独断と偏見で当てはめたサッカーのポジション表
オシドリ♂
オシドリ♀
オシドリAix galericulata
全長:45cm ・漂鳥、または留鳥
観察難易度:★★
トモエガモなどと同じく、分布が東アジアのみに限られた種であるため、欧米のバーダーには受けがよい鳥の1つ。山間の河川やダムなどを好み、そのような場所では数百羽が越冬する場所も知られている。公園の池などで越冬するものもいるが、本来は木で囲まれているような場所を好む。枝が水面まで張り出しているような場所では枝の上で休息していることも多いので、水面だけを探すのではなく、張り出した枝の上まで探してみよう。
アメリカヒドリ♂
アメリカヒドリAnas americana
全長:48cm ・数少ない冬鳥
観察難易度:★★★
ヒドリガモと同じような環境で越冬して、ヒドリガモの群れの中にいることが多い。越冬中のヒドリガモの群れを1羽1羽見ていくと、顔の模様が「アメリカヒドリっぽい……」鳥を見る機会は少なくないが、よく各部を観察すると、どこかにヒドリガモのような特徴がある(交雑の可能性がある)ことが多く、これこそ「文句なく、アメリカヒドリ!」と断言できる鳥を見る機会は多くないので、文句の付けどころがない個体に出会えると、得した気分になれる。
ミコアイサ♂
ミコアイサ♀
ミコアイサMergellus albellus
全長:雄44cm、雌39cm・ほぼ全国で冬鳥
観察難易度:★★
湖沼、池、河川などに渡来するが、小さい池や狭い川に渡来することは少なく、広い水面で見ることが多い。多くのカモ類の中から探すときも、「パンダガモ」と称される雄は、よく目立つので見つけやすい一方、雌はあまり目立たず、似た模様をしているハジロカイツブリやミミカイツブリと混同するかもしれない。しかし、頭がきれいな茶色をしているので区別することができる。ところで、この雌の頭の茶色を見て、栗まんじゅうを連想してしまうのは私だけだろうか……。
ビロードキンクロ♂
ビロードキンクロMelanitta fusca
全長:雄58cm、雌50cm・東北以北で冬鳥
観察難易度:★★★
北海道周辺の海上では普通で、少ないながら本州中部以南でも見られる。北海道では漁港などでクロガモと一緒にいることが多いが、関東地方では海上で群れているスズガモの中に混ざっていることも多いので、注意深く探してみるとよい。近年は北米産亜種のアメリカビロードキンクロも記録されているので、本種と出会えた場合には、しっかりと特徴を確認してみたい。
シマアジ♂
シマアジ♀
シマアジAnas querquedula
全長:38cm ・旅鳥
観察難易度:★★★
個体数は多くないが、珍しいというほどではない。しかし、越冬せずに通過する地域が多いため、滞在期間が短く、観察できる期間が少ない。写真のような美しい雄夏羽を見る機会は少なく、秋の渡りの時期には、コガモの群れの中で雌タイプの個体を見ることが多いが、漠然と見ているだけでは、なかなか見つからないだろう。よく似たコガモの群れで本種を探し出すポイントの1つが顔の模様で、模様がはっきりとした、どこかカルガモを思わせるような顔立ちだ。そして、周りのコガモと比べると嘴が長いこともよくわかる。
コオリガモ♂
コオリガモ♀
コオリガモClangula hyemalis
全長:雄60cm、雌38cm ・東北以北で冬鳥
観察難易度:★★★★
主に東北以北の海上に渡来し、北海道の漁港などで観察できるが、それ以外の地域では見ることが難しく、稀に1〜数羽が見られる程度。その姿とともに、声も非常に特徴的で「アッ、アッオーナー」と聞こえる声でよく鳴く。この声を「会おうな!」と聞きなしして、この声に呼ばれるかのように、厳冬期の北海道まで、はるばる会いに行く義理堅いバーダーもいるとか。
シノリガモ♂
シノリガモ♀
シノリガモHistrionicus histrionicus
全長:43cm・中部以北で冬鳥(東北以北で少数が留鳥)
観察難易度:★★★
鳥を見はじめたばかりの人にとって、派手な模様をした本種の雄はあこがれの鳥の1つかもしれない。主に北日本の岩礁の多い海岸に渡来するが、漁港の中で見られることも多い。波が当たるような岩礁の上で休んでいるときはゆっくり見ることができるのだが、海上に浮いているときはよく潜ってしまい、浮かび上がる場所も定まらないので、潜った後は視野を広げて、広範囲に目を配り、海上に浮かび上がった姿をいち早く見つけたい。
ホオジロガモ♂
ホオジロガモ♀
ホオジロガモBucephala clangula
全長:雄47cm、雌40cm・東北以北で冬鳥
観察難易度:★★
漁港や海上で見られ、おにぎり形をした頭の形が特徴的。日本での正式な記録はないが、色合いがよく似たキタホオジロガモとは、この頭の形が決定的な識別ポイントとなる。日本では似た種が見られずに、簡単に識別できるような種でも、識別できたから終わりでなく、細部にまで気を配りながら観察をしていると、日本の図鑑に出ていないような鳥と出会ったときも、直感的に「違う!」と気づくことができるという好例だろう。
ヨシガモ♂
ヨシガモ♀
ヨシガモAnas falcata
全長:48cm・ほぼ全国で冬鳥
観察難易度:★★
淡水域で越冬することが多いが、岩の多い海岸などで少数が見られることもある。「ナポレオンハット」とも呼ばれる雄はあまり見間違えることがない。その一方で、雌は「目立った特徴がないことが特徴」というような姿をしており、初めて見たときには識別になかなか自信がもてないかもしれない。しかし、ほかの似た種と比べると、寸詰まりでコンパクトな体形なので、色や模様だけにとらわれず、体形にも注意してみるとよいだろう。
トモエガモ♂
トモエガモ♀
トモエガモAnas formosa
全長:40cm・本州以南の日本海側で冬鳥
観察難易度:★★★
韓国では本種だけで大群を作って越冬し、日本でも石川県や新潟県などでは本種だけの群れを作って越冬をしているが、それ以外の地域ではコガモなどとともにいることが多い。このような群れの中から本種を探すときは、雄成鳥の特徴的な顔の模様はよく目立ちそうに感じるが、これが思った以上に目立たない。そのため、コガモの群れの中などに入っている場合の発見難度は意外に高い。雄を見つけるポイントは、胸と腰にある白色の帯で、この点に注目して探すのがよく、寝ている場合なども、ここに注目して探したい。
ツクシガモ
ツクシガモTadorna tadorna
全長:63cm ・九州で冬鳥 観察難易度:★★★★
九州の有明海など西日本の限られた場所以外では少なく、今回編集部が選んだ種の中で、全国的に観察する機会はコオリガモと並んで最も少ない種ではないだろうか。それだけに身近な場所で見つけたときの喜びは大きい。珍しい種だが、よく目立つ種なので発見難度は低く、見つけることはたやすい。特に他種と一緒にいる場合、本種の大きさが際立ち、とても大きなカモに見える。
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Author Profile
田仲謙介
バードガイド。アルパインツアー「鳥の観察会」で、旅行の企画から実施に全般的に携わる。コロナ禍の影響で、家で過ごすことが多くなったが、その楽しみはコーヒー、読書、植物栽培。写真は南米エクアドルアマゾンにて。
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石田光史