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7/21 2021

夏休みの自由研究におすすめ セミのぬけがら調べ

セミのぬけがら6種盛り

セミの声ってどんな声ですか?


「ミーンミンミンミン」と答えるのは関東の人。街中でミンミンゼミの声が聞こえるのは東日本ならではで、西日本では山へ入らないと聞くことができません。関西の人の答えは「シュワシュワシュワシュワ」というクマゼミの声で、関東では聞く機会がほとんどありません。

ミンミンゼミ

クマゼミ

このようにセミは声で種類がわかります。身のまわりにどんなセミが何匹いるかを調べられれば、夏休みの自由研究のテーマにもなります。でも声がわかりにくいセミもいるし、メスは鳴かないし、どうやって数えればいいのでしょう。
 
そんな悩みを簡単に解決するのが「ぬけがら」。
よく公園で見かけ、道ばたの植物などにもついている、セミのぬけがらです。

ぬけがら調べで、いろいろなことがわかる!

ぬけがらとは、セミの幼虫が成虫になるために脱皮(羽化)して脱ぎ捨てた殻。ぬけがらを調べることで、セミの種類とオスメスがわかります。さっそく、調べてみましょう!
 
① 調べる場所を決める
庭でも公園でも安全な場所ならどこでも構いません。ぬけがらを集めて、調べる場所を決めます。夏休みの間に何回か調べるかもしれないし、来年も再来年も調べて今年と比べるかもしれません。大切なことは毎回同じ場所でぬけがらを集めて調べること。たくさん集めることが目的ではありません。いくつか違う環境を選んで、比べてみるのもいいでしょう。あまり広い場所に決めてしまうと、集めるのも調べるのも大変になってしまうので、調べる場所を広くしすぎないのがコツです。
 
② ぬけがらを集める
①で決めた場所にあるぬけがらをすべて集めます。おすすめの時期は7月下旬以降。あまり早い時期だとセミがあまり羽化しておらず、ぬけがらの種類や数が少なくなってしまいます。翌年以降も調べる場合は、同時期に同じ場所で調べることが大切。同じ「ものさし」にすることで、データを比べることができます。ぬけがらを取る「高さ」にも注意。たくさん取るのが目的ではなく、同じやり方で取ることが「比べる」ために大切です。虫とり網を使うなどして高い位置のぬけがらを取ることもできますが、見分けるために大切な部分を壊してしまうことがあります。無理なく手が届く高さなど「ものさし」を決めましょう。
 
③ ぬけがらの種類とオスメスを見分ける
集めたぬけがらを調べ、種類とオスメスの数を確認します。今回は都市の市街地で取れるぬけがら6種を調べます。

【種類の調べかた】
 
① 小さく丸っこくて土がついている→ニイニイゼミ
それ以外→②

ニイニイゼミのぬけがら

② 大きさはおおむね
2.5cm以内→③
2.5cmよりも大きい→④
 
③ 茶色っぽくつやがあり、背が曲がるような形→ヒグラシ
白っぽくてつやがなく、ほぼまっすぐな形→ツクツクボウシ

左:ツクツクボウシのぬけがら 右:ヒグラシのぬけがら

④ 大きくて金色っぽく、足の付け根にでっぱりがある→クマゼミ
それ以外→⑤

クマゼミのぬけがら

足の付け根のでっぱり

⑤ 触角(しょっかく)に毛が多く、付け根から3番目の節(ふし)がほかの節に比べて長い。鼻のような部分にこげたような黒い模様がある→アブラゼミ
※触覚が折れてしまっている場合は、鼻のような部分の黒い模様があるかどうか見る。

アブラゼミのぬけがら

触角に毛が多く、付け根から3番目の節がほかの節に比べて長く、鼻のような部分にこげたような黒い模様がある

⑥ 触角の毛は少なく、ふしの長さはどれも同じくらい。鼻のような部分に黒い模様はなく、土がついていることが多い→ミンミンゼミ

ミンミンゼミのぬけがら

触角に毛が少なく、ふしの長さはどれも同じくらい。鼻のような部分に黒い模様がない。

【オスメスの調べかた】
 
ひっくり返してお尻を見ます。大きめのでっぱりが1つあればオス。小さめのでっぱりと、そのうえに溝のような部分があればメスです(すべての種類に共通)。

オス

メス

集めたぬけがらをすべて見分けたら、数えて記録しましょう。表計算ソフトを使えば、種類やオスメスの割合をグラフにすることもかんたんです。

ぬけがらを調べた結果を考えよう

ぬけがら調べでは、いろいろなことがわかります。
 
・自然の豊かさがわかる
 
自然豊かな環境には多くの種類がすみ、自然が少ない環境ではニイニイゼミやヒグラシはあまりいませんので、調べた場所の自然の豊かさがおおまかにわかります。環境の違う場所を調べることで、自然の豊かさを比べることができます。
 
・時期の違いによる変化がわかる
 
セミは種類によって発生の時期が異なります。東京の場合、最初に羽化するのはニイニイゼミ。次いでヒグラシやミンミンゼミ、アブラゼミが続きます。夏の後半に羽化するのはツクツクボウシ。ちなみに、なぜかヒグラシは夏の終わりに鳴くと思っている人が少なくないのですが、実際にはかなり早い時期から羽化します。
オスメスに関しても、夏の前半はオスばかりで、後半は逆にメスばかりとなります。それはなぜか。その理由を考えてみるのもおもしろいでしょう。
このように夏の前半と後半の2回調べることで、種類やオスメスの発生時期の違いがわかります。
 
このように、セミのぬけがら調べはかんたんに多くのことを調べることができ、夏休みの自由研究のテーマとしてもおすすめです。もしかすると、これまで誰も知らなかったことを見つけることができるかもしれません。
 
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Author Profile

髙野丈

文一総合出版編集部所属。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。また井の頭公園を中心に都内各地で自然観察会を開催し、屋外でのイベントだけでなく、サイエンスカフェやカルチャースクールでの講演活動にも取り組んでいる。得意分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『井の頭公園いきもの図鑑』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌入門』(文一総合出版)がある。

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