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10/7 2021

近所の公園で鳥見してみた【前編】

コロナ禍で遠出できず、身近な公園を散策する人が増えています。
そんな人にオススメなのが鳥見。そう、野鳥観察です。
じつは身近な公園でも、おどろくほどいろいろな野鳥に出合うことができます。
ただ歩くだけなんて、もったいない!
目を凝らし、耳を澄ますだけで、今までは気づかなかった鳥たちを見つけることができ、見える世界ががらっと変わります。
それは1つの非日常体験と言っても過言ではありません。
 
……ちょっと熱く語りましたが、気軽に楽しめるのが鳥見のいいところ。
実際に街中の身近な公園で鳥見してみました。さて、どんな鳥に出合えるでしょうか。

今回は東京・吉祥寺の井の頭公園で鳥見します。ここが公園の入口。

公園に入ったら、ベンチで準備を整えましょう。といっても、双眼鏡と図鑑、ノートを取り出すだけ。

双眼鏡は8〜10倍くらいの倍率で、25〜32mmくらいの口径の機種がオススメです。
裸眼の人は目当てを引き出します。メガネをしている人はそのままで。
次に2つの円が1つに見えるよう、双眼鏡の幅を調節します。
幅が目に合ったら、対象がはっきり見えるように、つまみを動かしてピントを合わせてみましょう。これで準備完了。
 
慣れないうちは、なかなか鳥をとらえられないかもしれません。
うまく双眼鏡に入れる*コツは、見る方向に顔だけでなく身体もまっすぐ向けることです。
目視でとらえて相対し、そこに双眼鏡を添える、という感覚と言いましょうか。
*入れる:鳥見用語で観察対象を双眼鏡や望遠鏡の視野でとらえること。探鳥会などで、リーダーが望遠鏡の視野に鳥をとらえたとき、「◯◯入りました」のように使います。また、あるフィールドに特定の種が現れたときに「◯◯公園に◯◯が入ったらしいよ」とも。

この公園では、入ってすぐに大きな池があります。まずは水辺の鳥を探してみましょう。
 
背の高い草のすきまから、大きな鳥が見えました。探し始めるなり、いきなりこんな大きな鳥に出合えるなんて、すごくないですか。
鳥を見つけたら、どんな特徴があるかよく観察してみましょう。

大きくて首がとても長い。くちばしも長くて大きい。羽の色は白と灰と紺。アオサギですね。
のっしのっし歩いていますが、獲物でも探しているのでしょうか。
しばらく見ていると、
おお! なんだこのポーズ! ヨガというか座禅というか、へんなポーズを取ってじっと動きません。

じつはこれ、日光浴をしていると考えられています。鳥たちは水浴びや砂浴び、日光浴で羽のメンテナンスをします。
くちばしを開けた表情もユニーク。しょっぱなからおもしろい観察ができました。

次に目についたのが黒い鳥。これまた体が大きいですね。どこか恐竜っぽい感じもします。これは見たことがあるのでは?
そう、ウですね。緑色の目が印象的です。身の回りで見られるウは、カワウかウミウ。さあ、どちらでしょう。
こういうときには図鑑を使いましょう。

見分けポイントと環境を考え合わせると、カワウのようです。ウミウとともに鵜飼に使われる鳥です。
よく見ると、くちばしを開けて喉をふるわせています。暑いんでしょうかね。暑い日に犬が舌を出して、はあはあしているような。
 

しばらくすると、羽を大きく広げてポーズ!?

いえ、ポーズをとっているわけではありません。濡れた羽を乾かして、体温を調節しているのです。カワウの羽は水を弾きにくく、濡れやすい性質があります。羽が濡れたままだと体温が奪われてしまうので、ちょくちょく乾かすことで体温を奪われないようにしているんですね。おちゃらけているわけではないんです。理由を知ると納得なのですが、おもしろいものはおもしろい。
 

カルガモもいました。このカモはよく知られていますね。昔、大手町の交差点を家族で横断するのがニュースになっていました。くちばしが黒くて、先っぽが黄色というのが特徴。カモの多くは冬にやってきて越冬する冬鳥ですが、カルガモは1年中います。

なんだあれ、別のカモ? いや何か違う。黒っぽくて真っ赤なくちばしの水鳥。図鑑で調べると、バンという鳥だとわかります。くちばしの大きさや形がカモとは違いますね。首を前後に動かしながら泳いでいます。懸命に進もうとしているけど、あまり進まないみたいに見えます。なんか、こっけいですね。

バンと同じくらいの大きさの、別の鳥もやってきました。この鳥はバンと違ってスイスイ泳げるようです。水面にぷかりと浮かんでいましたが、しばらくすると「ピヨピヨピヨ」という声で鳴きながら、別の鳥に近づいていきました。そして、その鳥から餌をもらいました。

羽毛がふわふわだと思ったら、幼鳥だったのですね。この鳥はカイツブリです。親鳥は幼鳥に餌を与えると、すぐに潜水。次の餌を捕りにいったのでしょう。子育ての微笑ましい場面を観察することができました。
 
カイツブリの子育てを見ていたら、「チー」という声とともに青いきらめきが水面を横切りました。カワセミです!

青い背のじつに美しいこと。何度見てもうれしい鳥です。よくコバルトブルーと表現されますが、この輝く青い背を実際に自分の目で見ると納得できますね。しばらく見とれていると、ダイビングして獲物をゲット! みごとな狩りを見せてくれました。これぞワイルドライフ。
 
まるで画面ではなく、自然番組をリアルにしたような、非日常体験。
身近な公園でも、こんなに充実した鳥見ができるのです。
今すぐ鳥見を始めたい! そんなあなたにぴったりの一冊があります。
 
『今日からはじめる ばーどらいふ!』著:一日一種

マンガとイラストでわかるバードウォッチングスタートアップガイド。
必要な道具や鳥の探し方、楽しみ方など、最初に必要な知っておきたいあれこれを楽しいマンガとイラストでぎゅっとまとめました!
 
池だけでかなりの満足感ですが、お楽しみはまだまだこれから! 後編では森の鳥を探します。

Author Profile

髙野丈

文一総合出版編集部所属。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。また井の頭公園を中心に都内各地で自然観察会を開催し、屋外でのイベントだけでなく、サイエンスカフェやカルチャースクールでの講演活動にも取り組んでいる。得意分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『井の頭公園いきもの図鑑』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌入門』(文一総合出版)がある。

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