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12/5 2023

あこがれの冬鳥の探し方を、プロバードガイドが直伝!

シマエナガ 雪上をジャンプしながら移動することもある

冬は樹木の葉が落ち、初心者の人にとっても野鳥を観察しやすい季節!
バードガイド歴20年以上の石田光史さんが、冬にぜひ見てみたいルリビタキ、ハイイロチュウヒ、シマエナガの探し方をご紹介します。
(この記事は『プロバードガイド直伝 旬の鳥、憧れの鳥の探し方』からの一部抜粋記事です)

身近な公園で青い鳥、ルリビタキに出会おう

ルリビタキ 北海道、本州、四国の亜高山帯の針葉樹林で繁殖し、冬は本州以南で越冬する留鳥もしくは漂鳥。人の視線ほどの高さの低木や杭などにとまり、地上に降りて昆虫類を捕食する。木の実を採食することもある。オスの成鳥は体上面の青色、脇腹の橙黄色が鮮やか。

冬になると身近な場所でも魅力的な鳥が見られるが、なかでも人気なのがルリビタキだ。青い鳥が身近にいることは、意外と知らない人も多いかもしれない。一方、庭にもやってくるヒタキ類がジョウビタキ。じつはジョウビタキを知ることが、ルリビタキを探すコツにつながる。冬鳥が安定して見られるようになる12月に探してみよう。
 
達人はこう探す!
1、常緑樹が多いなど、やや薄暗い林を探す
2、目線ほどの高さの木や杭を探す
3、「カッ、カッ」ではなく、「ギュッ、ギュッ」という声
 
冬に観察できる青い鳥として人気があるルリビタキ。ジョウビタキと同じ公園で見られることも少なくない。ジョウビタキは木がまばらに生えている明るい林を好むが、ルリビタキは冬でも葉を落とさない常緑樹の中など薄暗い場所を好む傾向がある。

地上に降りたルリビタキのメス。冬は地上で採食することが多い

ジョウビタキ 全国の平地林、農耕地、河川敷、公園など比較的開けた場所を好んで越冬する、代表的な冬鳥。近年は中部地方を中心に国内各地の山地帯から亜高山帯で繁殖しており、ルリビタキと同じように漂鳥的な傾向がみられる。

そして地鳴きの違いに注目したい。両種とも「ヒッ、ヒッ、ヒッ」という地鳴きは酷似するが、交える声が異なる。ジョウビタキが「カッ、カッ」という乾いた声を交えて鳴くのに対して、ルリビタキは「ギュッ、ギュッ」という濁った声を交える。散策していて「ヒッ、ヒッ」が聞こえたら、交える声で両種を見分けよう。あとは姿を見つけるだけだ。ルリビタキは一定のリズムで尾羽を上下に振るのも特徴。常緑樹の暗がりにいても、尾羽の動きで見分けることができる。

一定のリズムで上下に振る尾羽の動きに注目したい

チュウヒと比較してハイイロチュウヒを見つけよう

ハイイロチュウヒ 全国に局地的に渡来する冬鳥で、渡来数には毎年変動がある。おもに平地の河川敷、干拓地などに生息し、巧みに飛翔しながら小鳥類を捕食する。オスは頭部から胸、体上面が青みのある灰色で、腰と体下面は白く翼先は黒い。メスも腰は白く、翼下面の黒い縞模様が鮮明。

コチョウゲンボウと並ぶ冬の人気者がハイイロチュウヒだ。オスは気品を感じるような美しい青灰色で、黄色に輝く眼光が鋭い。行動範囲が広く、俊敏かつ巧みな飛翔でじっくり見られないことが心をくすぐる。チュウヒとの違いはさまざまあるが、今一つ知られていない。じっと待つことも多いため、寒さが厳しくなる前の12月はよい時期だ。
 
達人はこう探す!
1、日中はヨシ原ではなく干拓地など開けた場所を探す
2、周回するように同じ場所を何度も見に行く
3、夕方はねぐらになるヨシ原で待ち伏せする
 
チュウヒは繁殖からねぐら、狩りの場と年間を通して生活をヨシ原に依存している。一方、同属のハイイロチュウヒは越冬で飛来する冬鳥。両種は似ているが、生活は異なる。

チュウヒ 留鳥または冬鳥。全国に分布し、本州中部以北で局地的に繁殖。平地の草原、湖沼、河川敷、ヨシ原などに生息し、冬はヨシ原に集団でねぐらをとる。羽色に個体差があり、褐色、白黒、灰色などさまざま。

ハイイロチュウヒのメス メスはオスに比べると地味だが、翼下面の鷹斑模様が美しく、チュウヒと見分ける識別点である。

ハイイロチュウヒはヨシ原でねぐらをとるものの、それほどヨシ原に依存した生活をしていない。チュウヒはヨシ原上空を、翼をV字に保ってゆらゆらと飛翔しながら飛び、地面にいるネズミなどを見つけてはサッと地上に降りて捕食する。一方、ハイイロチュウヒの行動はまるでハイタカやツミなど小型のタカのようだ。巧みな飛翔能力を活かして広大な干拓地を飛び回り、驚いて飛び立った小鳥類を巧みに捕食する。小さなヨシ原や荒れ地が点在するような、地形や環境に変化のある干拓地を何度も巡回しよう。

地上に降り、捕らえた小鳥の羽毛をむしるハイイロチュウヒのオス

大人気のシマエナガを見つけよう!

シマエナガ エナガの亜種で、国内では北海道のみに分布する留鳥。本州以南で見られるエナガとは異なり、黒い眉斑がなく頭部全体が純白。正面から見た姿が雪だるまやふわふわのぬいぐるみのように見え話題になっている。群れなしでは生きていけない社会性をもつ鳥。

冬の北海道といえば、以前はオオワシ、オジロワシ、タンチョウ、シマフクロウが代表種だった。最近、人気急上昇で、それらを上回る存在になったのがシマエナガ。北海道のみに生息するエナガの亜種で、真っ白な羽毛につぶらな瞳がかわいいと大人気だ。保温のために羽毛をふくらませ、もふもふした姿になる厳冬期がおすすめ。
 
達人はこう探す!
1、鳴き声で群れを見つけ、動きをよく観察する
2、樹液の出ている木を探す
3、追うのではなく、待ち受ける
 
冬の林を眺めて、小鳥の群れを探す。シマエナガはあまり木々がこみ合っていない比較的開けた林を好み、一定範囲を巡回する。常に群れで行動するので、比較的見つけやすい。本州のエナガと同じ「シシシ」「ジュール、ジュール」などの鳴き声も手がかりになる。白っぽく見える小鳥の群れを見つけたら確認しよう。

開けた雑木林を飛び、どんどん移動する

撮影するとなると、動きが素早く、追いかけてもなかなか難しい。なにしろ冬の北海道で移動するには、雪をラッセルするか、転ばないように気をつけながら氷の上を歩かなければならないのだ。そんなときは、いったんカメラを置いて群れの動きをよく見てみると、必ずやってくる木があることに気づく。カエデ類やシラカバは樹液が出やすい。樹液の出ている木を見つけたら、あとはそこで待っていれば、かわいらしい姿を撮影することができる。

何度もやってきて樹液をなめる

もっと野鳥の探し方が知りたくなったら…
プロバードガイド直伝 旬の鳥、憧れの鳥の探し方

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Author Profile

石田 光史(いしだ こうじ)

1970年福岡県生まれ。プロのバードガイドとして活躍しながら、野鳥写真家としての活動にも取り組む。Eagle eyeと称される、ずば抜けた動体視力を活かし、山野から外洋まで幅広くカバー。とくに日本近海での海鳥や海棲哺乳類観察のガイドには定評がある。漁船から豪華客船までさまざまな船に乗船し、国内の定期航路はもちろん、北方四島沖、国後水道、硫黄島3島沖など、ふだんなかなか行く機会がない海域でのガイド経験も豊富。日本野鳥の会会員。著書に野鳥図鑑としてはベストセラーとなった『ぱっと見わけ 観察を楽しむ野鳥図鑑』(ナツメ社)があり、『BIRDER』(文一総合出版)、『野鳥』(日本野鳥の会) など野鳥専門誌への写真提供や執筆も多数。

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