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2/14 2024

どう撮る? 一歩進んだ野鳥撮影のコツ

野鳥ってどうやったらうまく撮れるんだろう……?
そんな素朴な疑問をシーン別にプロが解説!
明日から実践できる野鳥写真撮影のコツを紹介します。
(この記事は『お手本でわかる!野鳥撮影術』からの抜粋記事です)

小鳥のさえずりを撮る

コルリ(5月 山梨県) 複雑な節回しで美声を披露するオオルリやキビタキと違い、コルリのさえずりは鮮烈だ。少し控えめな唄の序章、そして堰を切ったように勢いよく唄う姿に、時に圧倒され、シャッターを押さずに見入ってしまうこともある。コルリのさえずりは実に魅力的で印象深く、チャレンジングな被写体だ。

構図・色の狙い
❶ 口を大きく開けた、勢いあふれる姿を写し止めるため、前奏後のさえずりのリズムに合わせ、シャッターを切る
❷ 新緑の季節を表す淡いグリーンがコルリの背景になるように構図を選んだ
❸ コルリが止まっているのがモミジの枝だとわかるように、左右に葉の形を写り込ませた。
 
カメラと設定
まず気をつけたのはシャッタースピード。勢いのあるコルリのさえずりをブレずに撮影できるよう、なるべく早めに設定した。コルリのさえずり撮影では最低1/200以上が必要だろう。ただし、シャッタースピードを稼ぐためにISO感度を上げすぎるとノイズが出てしまう。シャッタースピードを早くしても、ISO感度はなるべく低く抑える。バランスを考慮した設定が大切だ。
(執筆・写真:野口正裕)
 

美しさを引き立て合う 花と鳥

ふんわりとしたソバの花に乗る冬羽のノビタキ(9月 京都府)。夏鳥として渡来し、北海道では平地の草原、本州中部以北では高原などに訪れて繁殖する。小さな虫を捕ろうと、よく花の上に止まっている。雄の夏羽は頭〜背が黒く、胸が濃いオレンジ色というビビッドな色をしているが、雌はやわらかな茶色でかわいらしい雰囲気だ。

構図・色の狙い
❶ 構図はカメラのグリッド機能などを使い、左下にメインの鳥と花を入れ、右上はうるさくないようにした。
❷ ノビタキの茶色が白いソバに映えるように、顔の近くに花も入るようにし、引き立て合うように。
❸ 花が単色の場合はボケに利用して雰囲気を出す。
 
カメラと設定
花と鳥を撮影するときは、花のもつ雰囲気に合わせて撮影時の設定を決める。ソバの花の場合は、ふんわりした雰囲気にするのを目標に、強い光が当たらない曇りの日を狙いたい。暗くなりがちなので絞りは開放、現地でシャッタースピードとISO感度のチェックをし、飛翔が撮れそうならシャッタースピードを上げて対応する。手前の花をボケさせる立ち位置も意識して画面を構成した。
(執筆・写真:北野真弓)
 

一度は撮ってみたい、圧巻の鳥の群れ

ハクガン(12月 アメリカ)。白い体と黒い初列風切のコントラストが美しいハクガン。大群が一斉に飛び立つ様は、Snow Geeseの英名の通り、大空に舞い散る雪のようだ。1羽でも美しいのに、数万羽の群れともなるとさらにその魅力が増大する。野生のエネルギーが爆発するかのようなハクガンの飛び立ちは、何度見ても興奮する光景だ。

構図・色の狙い
❶ 群れの中でもっとも密度が高く、均質に群れが広がっている部分を狙う。
❷ ハクガンと風景の発色を良くするため、順光になる場所から撮影する。
❸ 空、山/森林、水面の3つの要素が美しい部分を背景にする。
 
カメラと設定
ハクガンの群れが一斉に飛び立つのは突然なので、すぐに対応できるようレンズ選択と各種設定を済ませておく。多くの場合は1台のカメラに500mmクラスの超望遠レンズを装着して群れの密集感を狙い、もう1台のカメラには70-200mmクラスの望遠ズームレンズを装着して群れの広がりを狙う。飛翔するハクガンの動きを止めるためシャッター速度は1/1000以上に設定し、絞りは開放か1〜2段絞る程度だ。
(執筆・写真:中野耕志)
 

迫力満点! 狩りの瞬間

ハヤブサがアオバトを仕留めた瞬間(8月 北海道)。最速の鳥ともいわれるハヤブサは、ファインダーの中に収めるのもひと苦労。その能力が最も発揮されるのが、狩りの瞬間だ。超高速で獲物に爪を突き立て、飛んでいるハトやカモなどの大きな鳥でも羽や胴体に致命傷を負わせ、墜落させる。その妙技に心が震える。

構図・色の狙い
❶ 獲物に爪を立てる瞬間に翼を広げて減速するときに、フレームアウトしやすいので、構図は少し広めにとる。トリミングで整えることも念頭にいれよう。
❷ 黒と白のしま模様の羽が映えるよう、晴れの順光で海の青い色が背景になるのを狙った。
 
カメラと設定
ハヤブサの超高速の狩りに対応すべく、シャッタースピードは1/3200~1/5000はほしい。シャッタースピードを上げるには光量が必要なので、晴れた日の順光を狙うが、暗ければ、ISO感度を上げシャッタースピードを稼いでもよい。飛んでくるハヤブサをなるべくファインダーの中に入るようにし、獲物のアオバトとの距離が近くなった瞬間からシャッターを切りはじめる。一発撮りはほぼ無理なので高速連写で撮影する。
(執筆・写真:佐藤 圭)
 

鳥に配慮した撮影を心がけよう 〜鳥たちからのSOSサイン〜

夕方、河畔のヤナギで休息していたカワセミ。死角からゆっくりと近づいた後、枝の隙間からのぞき込むようにして撮影した。落ち着いた表情で、羽毛も空気を多く含み、まるまるとしたシルエットに見える。

注意すべき事例とリラックスした姿を撮る考え方
 
思いがけず鳥を警戒させてしまうことは誰しもある。ただ、それを警戒のサインと気付けずにいると、鳥にもよくないし、表情も固くなる。リラックスした表情の撮り方と、自戒も込めて、警戒姿勢の事例を紹介するので、参考にしてほしい。
 
鳥を警戒させずに近づくには?
 
なるべく距離がある状態で発見すると同時に、その鳥が「何をしているか」を把握することが重要だ。その行動をやめない距離が、接近してよい距離の目安になる。例えば、初夏の草原でさえずるホオアカを双眼鏡で発見したとする。距離が遠いので、歩いて接近を試みる。その際、植え込みや樹木、看板などの陰を伝い、自分の姿をなるべく見せない角度から近づくと距離を詰めやすい場合がある。姿勢を低くすることも有効で、共通するのは「いかに自分を小さく見せるか」だ。撮影者の接近によってさえずりをやめ、「チチッ」という警戒声を発しはじめたら、それはすでに近づきすぎだ。警戒した表情の写真しか撮れないので、すみやかにその場を離れよう。
 
「近づく」という発想を捨てる
 
採食中など、鳥が動いている場合には、待ち伏せることも有効だ。「鳥に近づく」というより、「鳥が近づいてくることを邪魔しない」という発想を持とう。

カワアイサ。発見からしばらくは観察に費やし、採食範囲を見極めた。水中に潜っている間に進行方向の岩陰にしゃがみ込み、待機。姿勢やカメラ設定を整えて待ったことで、最小限の動作で鳥に気づかれずに撮影できた。

(執筆・写真:菅原貴徳)

 
もっと野鳥の撮影術が知りたくなったら!
3/8(金)19時〜 オンラインイベント
野鳥撮影の達人二人が語る、作品づくりの楽しみ
 
お手本でわかる野鳥撮影術』の執筆者であり本記事で「さえずりの瞬間を撮る」を担当した野口正裕さんと、「光のマジック」を担当した中村利和さんおの二人がオンライントークに出演。豊富な経験によって磨かれたノウハウを披露しながら、野鳥撮影と作品づくりの楽しさをお伝えします。
日時:2024年3月8日(金) 19:00〜20:00

参加方法:Zoomウェビナーによるライブ配信

参加費:無料

定員:300人(先着順・無料)

主催:株式会社文一総合出版

講師:中村利和×野口正裕

司会:髙野丈(文一総合出版編集部)
お申し込み・詳細はこちらから:https://bird-photo.peatix.com/

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Author Profile

野口正裕(のぐち まさひろ)

東京都出身。広告のデザイン制作のかたわら、さまざまな野鳥の優しい表情を記録し、物語を感じる写真を撮ることを心匠とし活動をしている。

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北野 真弓(きたの まゆみ)

ネイチャーフォトグラファーとして活動する中で野鳥の美しさに魅了され、「野鳥のいる風景写真」を目指している。2019年「月刊フォトコン」(日本写真企画)マンスリーフォトコンスクール ネイチャーの部 年度賞1位、2022年 JBF全日本鳥フォトコンテスト 生態行動部門 グランプリ受賞。

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中野 耕志(なかの こうじ)

野鳥や飛行機の撮影を得意とし、カメラメーカーの公式作例撮影や野鳥/航空専門誌に作品を発表。著書『パフィン!』(河出書房新社)、『野鳥写真の教科書』(玄光社)、『飛行機写真の教科書』(玄光社)、『侍ファントム F-4最終章』(廣済堂出版)など多数。

X(Twitter):@JETBIRDER

Instagram :koji_nakano_photography

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佐藤 圭(さとう けい)

動物写真家/SLASH写真事務所代表。北海道の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、企業、雑誌、ウェブマガジンなどへ写真を提供、執筆活動も行っている。アルパインブランドMILLETアドバイザー。著書に『鳴き声できずなを結ぶ エゾナキウサギ』(文一総合出版)など。

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菅原 貴徳(すがわら たかのり)

東京海洋大学で海洋学,名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後,写真家に。写真集『木々と見る夢』 (青菁社),『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)など。

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