北海道に生息しているエゾモモンガ。大きな目とふわふわの見た目が可愛らしい動物ですが、森の中でどのように暮らしているのでしょうか?
写真絵本『森でつながる エゾモモンガ』から、エゾモモンガの基礎知識をご紹介します。(文章・写真 原田佳実)
A1 モモンガはリス科の動物です。日本には、本州から九州にかけての地域で3種(ニホンリス、ムササビ、ニホンモモンガ)、そして北海道に3種(エゾリス、エゾシマリス、エゾモモンガ)、計6種のリス科の動物が生息しています(外来種を除く)。中でも、エゾモモンガとニホンモモンガ、そしてムササビは主に夜間に活動し、木から木へと飛び移る「滑空性」のリスです。
A2 エゾモモンガの頭から尻までの長さは、15~18cmほど。尾は約10cmで、平べったい形をしています。体重は80~120gほどと軽く、前脚と後ろ脚の間についた「飛膜」を利用して、木から木へと滑空します。毛の色は、冬は灰色ですが夏は薄い茶色に変わります。
本州にすむニホンモモンガの見た目は、ほぼエゾモモンガと同じです。ちなみに同じように滑空性のリスであるムササビは、毛色が茶色く、ほほに白い線があります。体の大きさはモモンガの約3倍。ムササビが飛膜を広げて飛ぶ姿は「座布団」、モモンガは「ハンカチ」に例えられます。
エゾモモンガ 背中にぺたりと付けた尾は滑空するときに伸ばす。
ムササビ 頭から尻までの長さは25~50cmほど。尾は約30~40cmと、太くて長い。体重は700~1200g。
A3 A1で説明したとおり、北海道にはエゾモモンガが、本州・四国・九州にはニホンモモンガが暮らしています。これらは見た目はよく似ていますが、体や骨の形、遺伝子に違いがあります。エゾモモンガは数十万年前、ユーラシア大陸から氷の上をわたり、日本にやって来ました。一方、ニホンモモンガはアジア大陸からやって来たと考えられています。その分布は「ブラキストン線」と呼ばれる、津軽海峡を通る見えない線によって分かれています。
A4 エゾモモンガは広葉樹(ハンノキやヤナギなど)や針葉樹(トドマツやカラマツなど)の葉や芽、種子など、季節に応じた植物を食べて暮らしています。春は芽ぶいたばかりのやわらかい広葉樹の葉を食べ、夏から秋は栄養価の高い実や種子を積極的に食べて寒さのきびしい冬に備えます。冬はハンノキの雄花やトドマツの葉などで飢えをしのぎます。また、植物だけでなく昆虫も食べることがあるようです。
左:ヤナギの若葉(春)、右:ハンノキの雄花(冬)
A5 エゾモモンガは、鳥のように羽ばたいて空を飛べるわけではありません。木の高いところまで登って飛膜を広げてジャンプし、尾で舵を取りつつ、ゆるやかに落ちながら目標の木の前でわずかに上昇して着地します。これを「滑空」と言います。飛び出す木の高さによっても変わりますが、最長で50メートルほどの距離を滑空することができるようです。
食事も睡眠も樹上で行うエゾモモンガは、北海道の森に暮らすリスの仲間。木から木へと飛び移り、暗い夜の森でほかの動物と関わって生きる、彼らの謎につつまれた生態を伝える写真絵本。滑空できる距離や巣穴の場所、活動する時間帯などを紹介するQ&Aも収録。親子でエゾモモンガと森のつながりについて学ぶことができます。
原田佳実 写真・文 / B5判 / 48ページ
ISBN 978-4-8299-9022-3 2024年11月12日発売
定価2,200円(本体2,000円+10%税)
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著者が語る制作秘話を、文一総合出版のnoteでお読みいただけます!
⽊と、森と、エゾモモンガと共に⽣きる。
Author Profile
原田 佳実(はらだ よしみ)
1985年、東京生まれ東京都在住。大学では動物生殖学を専攻、細胞が好き。2016年に出会ったエゾモモンガに魅了され、日本のリス科動物の撮影を始める。以来、一年中リスたちに会いに行く日々を過ごしている。個展に「りすぱら」(ギャラリー・ナダール/2018年11月)、「りすだもん」(ソニーイメージングギャラリー銀座/2020年1月)、「ももんがたり」(OM SYSTEMギャラリー/2024年11月)。