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12/17 2024

新紅葉ハンドブックでわかる紅葉のいろは

いっせいに木々が色づく紅葉は、秋の風物詩。
紅葉した景色を楽しむだけでなく、葉を通して樹木のことを知るのもおもしろいですよ。
この記事では、紅葉が100倍楽しくなるハンディ図鑑『新 紅葉ハンドブック』から、紅葉のいろは(基礎知識)をご紹介します。
(文・写真:林 将之)

紅葉のしくみ

紅葉(こうよう)とは、落葉に先立って葉が色づくことである。
狭い意味では、赤い色素ができて赤や色になることを紅葉、赤い色素はできず、黄色くなることを黄葉(おうよう/こうよう)と呼ぶ。また、褐色(かっしょく:茶色)の色素ができて葉が褐色になることを褐葉(かつよう)と呼ぶ。
しかし現実には、これらの中間や変異も多く、3語を厳密に使い分けるのは困難な場合も少なくない。

紅葉の条件・時期・代表種

美しい紅葉に重要な条件は、温度、光、水分の主に3つ。
 
一般に最低気温が8℃以下になると紅葉が始まり、5〜6℃になると一気に進むといわれる。夜によく冷えこむと、葉緑素の分解が進み、赤色の色素が生成されやすくなり、昼によく晴れると、さらに赤色の色素の生成が進む。乾燥すると葉が傷むので、適度な雨量や湿度も必要だ。
 
これらの条件を満たすや高山や渓谷の紅葉は鮮やかで、逆に都市部は乾燥気味で夜も気温が高く、色づきが悪い。台風による傷や、夏の天候も紅葉に影響する。
 
紅葉の時期は、9月中旬に北海道・大雪山や日本アルプスなどの高山から始まり、徐々に山地、低地へと南下するが、近年の温暖化で遅れつつある(気象庁の統計では最近70年で約21日遅れている)。

カエデの紅葉日の等期日線図

見たことある! 押さえておきたい赤い紅葉3種

イロハモミジ

暖地でも鮮やかに紅葉し、最も有名で最もよく植えられるカエデ。紅葉は赤〜橙色が中心で、日陰では黄色くなりやすいが、日なたでも黄一色になる個体もある。東京で見頃を迎えるのは平年11月下旬〜12月上旬頃。
狭義の「モミジ」は、本種とオオモミジ、ヤマモミジを指し、これらを交配し何百もの園芸品種が作られている。植えられる個体は大半が園芸品種で、特に赤系の紅葉が鮮やか。

ハゼノキ

暖地の赤い紅葉といえば、ハゼノキがナンバー1だろう。西日本では山野にふつうに生え、秋には常緑樹に交じってまっ赤に紅葉した姿があちこちで目立つ。鮮やかですんだ赤ほぼ一色で、多少の濃淡はあれど当たり外れも少ない。
夏の後半から、少数の小葉が赤く紅葉する葉もよく見られる。秋が暖かいと若葉が出やすく、沖縄では10〜2月まで紅葉が見られる。沖縄・中国原産。果実からロウを採取するためかつて栽培され、関東–九州で野生化。低地の明るい場所。時に庭。

アカシデ

黄葉(おうよう)ばかりのカバノキ科の中で唯一といってよい、赤く紅葉する木。若葉、花、果実も赤みをおびる傾向が強く、赤い色素を多くもっていることがわかる。葉が小型で紅葉も美しいので、昔から盆栽にも好まれる。
木全体がまっ赤になることは少なく、日なたの葉が鮮やかな橙〜朱〜赤色に色づき、日陰は黄色なので、葉ごとに色ムラがある様子も味わいがある。秋は翼のある果実も茶色く熟す。

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Author Profile

林 将之(はやし まさゆき)

1976年、山口県生まれ。樹木図鑑作家、編集デザイナー、環境ジャーナリスト。千葉大学園芸学部卒業。葉をスキャナで撮影する方法を考案し、国内外の森を取材。自然や生態系の魅力と問題をわかりやすく発信する。著書に『葉で見わける樹木』(小学館)、『樹木の葉』(山と溪谷社) 、『 樹皮ハンドブック』(文一総合出版)、エッセイ『葉っぱはなぜこんな形なのか?』(講談社)など。

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