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菌類・粘菌

fungi, Slime mold

  • 菌類・粘菌

5/26 2018

いま大注目「変形菌」の魅力が盛りだくさん!!
博物館イベントレポート(ミュージアムパーク茨城県自然博物館)

「変形菌-ふしぎ?かわいい!森の妖精-」の会場入口

これまでマイナー生物扱いされてきた「変形菌(粘菌とも呼ばれる)」がここ数年、密かなブームになっています。
その人気・注目度は凄まじく、この1年で少なくとも5冊の書籍が出版され、変形菌をテーマにしたトークショーや観察会は軒並み満席。まさに今もっともノリに乗っている生物と言っても過言ではないでしょう。
 
 
※「変形菌ってなに?」と思った人に簡単に説明すると「変形体と呼ばれるアメーバみたいな姿で落ち葉や倒木などの上を這い回り、子孫を残すときにきのこのような形の子実体をつくる生物」です。これはあくまで簡単な説明で、①変形体と子実体というステージをもち、②名前に「菌」ってついてるけど菌類(きのこやカビ)じゃない。ってことを押さえていればOKです。
 

左側が変形体。右が子実体。一生のうちで劇的に姿を変える不思議な生物

そんな大注目の「変形菌」にスポットを当てた企画展が開催されているのはご存知でしょうか? その名も「変形菌-ふしぎ?かわいい!森の妖精-」。茨城県のミュージアムパーク茨城県自然博物館で6月10日まで開催しています。
 
会期も少なくなっていますが、変形菌好きBuNa編集部員が実際に企画展に行ってきたので、その魅力をご紹介します!!
見学時は、この展示の担当者で県内の変形菌調査もおこなっている首席学芸主事の宮本さんに見所や制作の裏話を教えていただきました。
 
すでに行かれた人も、これから行く人も、そして行きたいけど行けない…。という人も会場の雰囲気を堪能していただければ幸いです。
 
それでは、いざ「変形菌-ふしぎ?かわいい!森の妖精-」(以下、変形菌展と略)へ!
 
 

見所①ジクホコリの拡大模型
超巨大な変形菌にビックリ!!

約2メートルある巨大なジクホコリの模型

展示室に入るとまず出迎えてくれるのが、変形菌界のスーパースター「ジクホコリ」の拡大模型。実物のジクホコリを知らないとその大きさにピンとこないでしょうが、実物の大きさは2ミリ弱。この模型は約2メートルあるので約1000倍の大きさ! 迫力満点です。大きくてもジクホコリの魅力である表面の光沢や白くて太い柄などは忠実に再現されています。
 
宮本さんによると、この模型はもともと1997年の国立科学博物館の企画展「森の魔術師-変形菌(粘菌)の世界-」のために日本変形菌研究会の皆さんが手作りしたもので、この5体が揃って展示されるのは、その企画展以来、約20年ぶり。歴史的な再結成を果たしているのです。はたして次に揃うのはいつになるんでしょう…。
 
ちなみに模型の横には、実物のジクホコリの標本も展示されていて、模型と実物とを見比べられるようになっています。
 
 

見所②森の妖精たち
細部までこだわったゆるキャラ

展示のところどころに登場する森の妖精たち

変形菌展では「森の妖精」と名付けられた5体(人?)のキャラクターが随所に登場し、展示の見所を紹介してくれます。
「なんだ、ゆるキャラか」とそのままスルーしてしまいそうですが、このキャラクターたち侮れません。
5体の妖精はそれぞれモチーフの変形菌がいます。例えば写真手前の「デルマ」、モチーフであるクビナガホコリという種類のすらっとした姿と柄の途中に透明の膨らみをもつという特徴がデルマの立ち姿や衣装にも表現されています。デルマ以外の妖精にもモチーフとなっている変形菌の特徴が細部に描かれていて、変形菌の特徴が妖精のどこに表現されているのかを見つけるのが変形菌ファン的にはたまりません……。
 
 

見所③変形体と迷路
最短距離で迷路を抜け出してみよう!

変形体をイメージした合羽を着て迷路に挑戦!

とくに子どもに大人気。迷路内を走るのは危険なのでご注意を

この博物館の企画展には、毎回斬新な体験コーナーがあるので、いつも注目しています。過去には、人間の大きさに合わせて作られた「ごきぶりホイホイ」などユニークな展示が多数ありました。
そして、今回の体験コーナーは「迷路」。2008年にイグノーベル賞を受賞した中垣先生(北海道大学)の「変形菌には迷路を最短距離で解く能力がある」という研究を模した展示です。
変形菌をイメージした黄色の衣装を着て迷路を歩けば「迷路を解く変形菌」になりきることができます。展示初日には中垣先生自らこの迷路を体験し、その出来栄えに太鼓判を押されました。
 
豆知識:中垣先生のイグノーベル賞受賞トロフィーが展示室の出口付近に飾られているので、こちらも要チェックです。
 
 

見所④変形菌ジオラマ
実物をたくさん見たい人は必見!

ファン憧れの好雪性変形菌も実物が展示されています

変形菌に興味があるけど、実物はまだ見たことがない…という人に特におすすめなのがこのジオラマゾーンです。
落ち葉、倒木、生木など変形菌が発生する環境を再現したジオラマにたくさんの実物の変形菌が展示されています。発生する環境がリアルに再現されているので、自然の中で変形菌がどんなところにいるのかを目で見て理解することができます。
変形菌探しに挑戦したい人はまずはここで目慣らしをしておくといいでしょう。
 
ジオラマの中でも特に注目なのが「好雪性変形菌」という雪解け直後に特異的に発生する種類。この仲間は美しい姿のものが多く、愛好家の中でも憧れの存在です。今回の展示には、宮本さんが山形県まで採集に行った貴重な好雪性変形菌がたくさん展示されているので、こちらも変形菌ファンは必見です。
 
 

見所⑤変形菌シアター
ダイナミックな一生を動画で堪能

変形菌の劇的な変身、倒木上を動き回る変形体の姿を堪能できます

動画は正面だけでなく足元にも

変形菌の最大の魅力といえば、名前の由来でもある劇的な変形(変身芸)です。このシアターではこの企画展のために宮本さんとプロカメラマンが撮りためてきた、とっておきの変形菌動画を見ることできます。
アメーバ状だった変形体が一夜にしてきのこのような姿(子実体)に変化する様子や倒木の上を這い回る変形体の姿はまさに圧巻! 変形菌のことを知らない来館者もこの動画には思わず「おぉ〜!!」と声を上げていました。
 
シアターでは4本の動画が流れていますが、どれも貴重な映像でつい見入ってしまいます。堪能するためにも時間に余裕をもって鑑賞することをおすすめします。
 
 

見所⑥変形体の生体展示

温度が保たれた円柱の中を変形体が自由に這い回る

取材当日の変形体。生きているので同じ姿は二度と拝めません

ドラマチックな変形菌の動画を見ると、やはり見たくなるのが生きている変形菌。そんな気持ちを見越してか、シアターを抜けたところには生きた変形体が展示されています。
実際の変形体はせいぜい1時間に数センチほどしか移動しないため、動画のように動いているのを目で見ることはできませんが、這い跡などから生きていることを感じ取ることができます。
 
宮本さんによると変形体にも調子の良い悪いがあり、その日の状態でいる場所や大きさがまったく違うそうです。取材時はあまり調子が良くなかったようで、小さめでした。
 
豆知識:元気な変形体を来館者に見てもらうべく宮本さんはバックヤードで大量の変形体を育てています。展示の変形体の元気がなくなると、バックヤードの元気なものと交換、というのを日々繰り返しているそうです。
 
 

見所⑦変形菌と記念写真
企画展の思い出に、SNSのネタに。

スマホがあれば変形菌写真を撮ることができます

変形菌帽を被って記念写真!

盛りだくさんの展示を見て変形菌成分を満たしたあとは、記念に変形菌の写真撮影に挑戦してみましょう!
撮影用の変形菌とスマホ用のマクロレンズが用意されているので、スマホがあれば誰でもチャレンジできます。実際に撮影してみると、小さな変形菌を展示物のようにきれい撮影することがいかに難しいのか実感できます。
変形菌と一緒に撮影できるパネルも用意されているので、友達や家族と一緒にぜひ記念写真を。変形菌帽を被れば、気分はもう変形菌です。
 
 
 
ここまで、いくつかの見所を紹介してきましたが、もちろんこれ以外も楽しめる展示が盛りだくさんです。

変形菌の研究者として有名な南方熊楠の解説・展示ももちろんあります!

イグノーベル賞トロフィーもしっかり展示されていました

お土産に最適。変形菌展特製の変形菌マスキングテープ

博物館の展示と聞くと、解説パネルがたくさんあって文字を読みながら理解を深めるという構成が多いですが、この変形菌展には解説パネルが最小限しかありません。それは宮本さんの「とにかく変形菌のダイナミックさや多様さを感じてほしい」という思いのもと。
変形菌にそれまで興味がなかった人も、この展示を見れば変形菌の魅力に取り憑かれること間違いなしです。
 
めくるめく変形菌の世界へ踏み出す最初の一歩としては最適な企画展です。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか?

Credit  協力:ミュージアムパーク茨城県自然博物館

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BuNa編集部

株式会社 文一総合出版の編集部員。生きもの、自然好きならではの目線で記事の発信をおこなっている。

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