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BuNa コラボ企画

Collaboration

6/5 2018

日本最古の柚子のまち⁉【埼玉県毛呂山町】で植物観察[後編]

前編では、毛呂山町の「自然をPRしたいけれど、どうすればいい?」とのお悩みを解決するべく、佐々木知幸さんと一緒に平野部を探索。
後編では、おいしいグルメとたくさんの植物に出会います。
 
河原や田んぼ、神社など駅の周辺を散策した一行。いろいろ歩き回っているとすでに12時。お腹が空いてきます。自然探索の合間の楽しみと言えば、やっぱりお昼ごはんですよね!
毛呂山町にはその名もびっくり「ぶったまげ丼」があると聞き、役場の方おすすめの「毛呂山食堂」さんに行ってきました。

魅力その④:町の特産品を使った豚玉毛(ぶったまげ)丼

豚玉毛丼。とろとろの半熟卵を食べやすいようにと、スプーンも付けられている。650円(安い!)

このぶったまげ丼、正式名称は「豚玉毛丼」。なんとも強そうなネーミングですが、考案者の毛呂山町役場の中里さんによると、毛呂山町で育てられた豚、鶏の玉子、毛呂山の「毛」から命名されたとのこと。エネルギッシュな名前の通り、豚肉はバラ肉ではなくロース肉を厚めに切ってあり、ボリュームたっぷり。甘めのタレがかけられていて、半熟卵とマッチして卵かけご飯のような絶妙の美味しさ。それに、なんといっても名産のゆずの皮がとってもいい香りを醸し出しています。
 
 
こちらは毛呂山食堂オリジナルの焼きそば。

焼きそば(大)580円。この日はみんなで分けて食べました

ラードを使用しているので、具はキャベツのみにもかかわらずコクと甘みのある味わい。麺は一度ゆでて乾燥させ、再度水分を吸わせてコシを出したというこだわりのもの。やみつきになりそうな、独特の噛みごたえです。昔懐かしい屋台の焼きそばを思い出す、シンプルで何度も食べたくなる味。
お店は地元の方で賑わっており、役場の方も出前や飲み会のシメによく注文されるとのこと。また、ぶったまげ丼は毛呂山町の他のお店でも提供されているとのことで、隠れたB級グルメとしておすすめです。

毛呂山食堂。道を一本入ったところにあるので、事前に調べておくと辿り着けます。

魅力その⑤:散策にぴったり! ゆず香る桂木観音までの道のり

豚玉毛丼でエネルギーを補充したあとは、山の方にある桂木観音展望台を目指します。
滝の入(たきのいり)という地域には桂木観音までは散策路があり、越辺川の支流、桂木川を上流へ遡ることができます。
周辺には畑が続き、ゆずの樹がそこかしこに。
落ちた花の花弁をこすって匂いをかいでみると、ほのかなゆずの香りがします。

桂木観音までは少し遠いので、車かハイキングとして行くのがおすすめ

ゆず畑が多い滝の入周辺では、例年5月の中旬ごろから花をつける

さらに上流へと歩いて行くと、小川の遊歩道が現れます。

隣にはゆずの樹や田畑があり、歩きやすく植物観察をするにはうってつけの道です。コンクリートの三面張りではなくほどよく岩が配置されており、遊歩道から高さのある植物や樹木を見やすい点も◎。
ここからは、小道で見つけた植物の数々を佐々木さんのコメント付きでご覧ください。
 
 
オドリコソウ

佐々木さん:生成りの木綿のように、やや黄色みのあるオドリコソウ。半日陰で、やや湿って川岸に群れていました。生成りの色だけでなくピンクの花も。地域による個体差も魅力のひとつです。
 
 
謎のバラ

(※6/8編集部注:以前掲載していた写真が別のものだったため差し替えています)

佐々木さん:このバラ、なんかノイバラと少し葉っぱが違う。う~ん。もしかしたらミヤコイバラかもしれないんですが、新潟と長野県より西側のものなんですよね。なんだろな~
※取材後に佐々木が同定をしたところ、ミヤコイバラではなく、分布の狭い違うバラの可能性もあるとのこと。
 
 
ユキノシタ

右下の方で赤く伸びているものがストロン(匍匐茎)

佐々木さん:ここのは普通のより色がケバめ(笑)で、紫が濃いですね。あーかわいい。
この赤く伸びたものはストロン(匍匐茎)というんですが、先に新しく苗がついて、クローンで増えるんです。
 
 
フタリシズカ

佐々木さん:これはちゃんと2人ですね。2本花序がついているので、源義経と静御前のイメージで、フタリシズカという風流な名前がついています。ロマンチックでしょ? でも、これが2本ならいいんですけど3本、4本、5本のときもあります。2人のはずが、3人、4人もいるので、よく「お前誰だ!」ということになっています。
 
 
ジャケツイバラ

佐々木さん:ジャは蛇のジャ。マメ科なんだけど、5枚の花びらがパッと開いてますよね。マメ科には3つのグループがあって、マメ亜科、ネムノキ亜科、ジャケツイバラ亜科に分かれます。このジャケツイバラ亜科は日本ではすごく少ないので、知らないと、本当にこれがマメの仲間? という感じの花をしています。こういう上流域の川沿いのような、森のはじっこの樹にからみついています。
 
 
ダンコウバイ

佐々木さん:この先割れスプーンのような葉っぱが特徴です。全部がそうじゃないんですが、枝先のものはこうなりやすいですね。クロモジの仲間なので、茎を折ってみるといいにおいがします。
 
 
佐々木さんと歩くと、無数の植物の解説が繰り出されます! すべての植物は紹介しきれませんが、都市部と違って人通りが少ないからこそ、植物をじっくり見て・触って・嗅ぐことができる場所。図鑑を片手に、ああだこうだ言いながら名前を一から調べても楽しそうです。
さて、小川の途中からは、一路桂木観音展望台へ。この日はあいにくの曇りでしたが、元旦には初日の出を見に多くの人が訪れるそうです。少し下ったところには、ハイキングコースやゆず畑が続きます。

晴れているとスカイツリーまで見えるとのこと。この地形が、ゆずの生産に一役買っている

 
タブノキ
山道を下ったところには、埼玉県指定天然記念物の「桂木のタブノキ林」があります。最大のもので高さは24メートル、太さは1.09メートル!埼玉県では、タブノキ林はここでしか見られません。

埼玉県指定天然記念物「桂木のタブノキ林」。中央やや右の明るい色をしているのがタブノキ

佐々木さん:タブノキは通常もっと海辺の暖かいところに生えるのですが、ここは南斜面なのでタブノキが成長したのかな。埼玉県では普通は見られない木ですね。毛呂山町には寒いところに生える植物と暖かいところに生える植物が混ざり合っていますね。
 
毛呂山町役場の中里さん:桂木の周辺は、南斜面で日当りがいいし、下から風が吹いて一度山に当たるんです。そうすると逆転風という対流が起きて、冷たい風が直に吹きつけるのではなく、少し暖かい風になるので霜が降りにくい。霜が降りるとゆずはダメになってしまうので、この地形がゆずの成長にはいいみたいです。
 
 
ユズ

ユズのトゲ。とても長くて刺さると痛そう……

葉のように見える部分、翼(よく)という部分がユズの葉の特徴

毛呂山町のゆず栽培の歴史は古く、江戸後期1820年ごろには栽培が始まっていたそうです。ゆずはもともと奈良時代に中国から朝鮮をへて渡来したと推定されており、毛呂山では特に滝ノ入、阿諏訪、大谷木地区で栽培がさかんに行なわれてきました。
 
佐々木さん:ユズの特徴は、枝にとても大きなトゲがあり、葉っぱの葉柄に翼(よく)と言われる葉のように見える部分があることです。毛呂山町のキャラの、ゆず丸くんの矢にもちゃんとついてますね。
 
中里さん:ゆず丸じゃなくて、もろ丸くんです(笑)。毛呂山のゆずは、昨年都内の成城石井でブランドゆずとして販売して、今年から桂木ゆずという名前で売っていますね。ゆずの実の時期は11月中旬くらいからなのですが、今はゆず製品を町の農協などで買うことができます。
 

こう見えて、954歳とのこと。意外とお年を召している

町の文化「も」知る! 毛呂山町での自然観察のススメ

――毛呂山をまわって見て、いかがでしたか?
 
佐々木さん:毛呂山町では、植物観察も楽しみながら、ゆずなどの地元の農業に触れながらの観察会ができそうですよね。自然がたくさんあるというのはいいことなんですけど、山道を歩き慣れていないと危ない場合もある。なので、例えばこの小道は舗装もされているし、歩くという面でも、いろんな話題があるという面でも、観察会をするには嬉しい場所です。
 
――自然観察をするときには、ゆず畑の景観のような、自然の他に何かもう一要素があるといいということですか?
 
佐々木さん:そうそう。大自然で、何にも外来種がなくていい環境っていうのはそれはそれですばらしいんですが、ずっとメインディッシュを食べ続けている感じになる。一般の人が普段の生活とあまりにもかけ離れた大自然に急に向かっても、咀嚼しきれないというか、腑に落ちないんですよね。いずれはそういう自然の深いところを楽しめるようにもなってほしいと思いますが、まずはこういう里で自然観察に慣れ親しんでもらったほうが、スムーズかなと思います。毛呂山町は、自然観察の入り口としてはすごくいいと思いますよ。
 
 
観察のポイント5:まずは人里に近いところから行ってみる。地元の特産品や風土も一緒に知ると、より楽しい!

桂木観音の裏手には越生町に繋がるハイキングコースがあります

――毛呂山町役場の富沢さん・中里さん、今回の取材はいかがでしたか?
 
富沢さん・中里さん:今回の取材で、住んでいる町民ではなかなか気付くことができない、毛呂山町の新たな魅力を発見することができました。
今回の取材も踏まえ、毛呂山町役場としても町内外の方々に毛呂山町の魅力を知ってもらえるよう様々なPRを考えたいと思います。
毛呂山町は池袋駅から1時間程で来ることができ、動植物の観察や、特産品である『桂木ゆず』の香りを楽しみながらのハイキングなど、普段の生活とは一味違う、里山の魅力を体験することができます。今回の取材では紹介できませんでしたが、滝ノ入・ローズガーデンや鎌北湖の紅葉も一見の価値がありますので、ぜひ毛呂山町へ足を運んでみてください!
 
 
有名な自然公園や山に行くのも楽しいけれど、人目を気にせず植物観察をするのには、毛呂山町周辺はぴったり。春と夏は神社や野山を散策、秋は紅葉を楽しみ、11月中旬から12月下旬にはゆずの味覚を味わう、というように、レジャーも兼ねて気軽に自然を楽しんでいただけそうです。
 
自然好きの視点から見れば嬉しい要素がたくさん詰まった町、毛呂山町。
町の人も気づいていなかった魅力を、みなさんも発見しに行ってみませんか?
 
 
毛呂山町へのアクセス
電車 池袋から、電車で約60分!
・東武東上線池袋駅より東毛呂駅まで約60(坂戸駅越生線乗り換え)
・JR八高線八王子駅より毛呂駅まで約60(高麗川駅乗り換え)
車:短時間であちこち見て回る際は、車がオススメ
毛呂山市街まで:関越自動車道鶴ヶ島ICより約30分/圏央鶴ヶ島ICより約25
 
 
参考:毛呂山町役場へのアクセス
http://www.town.moroyama.saitama.jp/www/contents/1285719410828/index.html
もろやま観光マップ
http://www.town.moroyama.saitama.jp/www/contents/1285721189161/index.html
(毛呂山町ホームページより)
 
毛呂山の最新情報は、もろ丸くんのTwitterFacebookからもご覧頂けます。

Author Profile

BuNa編集部

株式会社 文一総合出版の編集部員。生きもの、自然好きならではの目線で記事の発信をおこなっている。

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