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Bird

  • 鳥

10/18 2021

近所の公園で鳥見してみた【後編】

公園を散策するだけなんてもったいない!というわけで、鳥見をおすすめする話の続きです。
【前編】では、東京・吉祥寺の井の頭公園の池を舞台に、水鳥たちのおもしろい行動を観察。美しいカワセミにも出会えて、充実した鳥見を満喫しました。
これだけでもお腹いっぱいですが、池の水鳥だけで鳥見を終わらせるなんてもったいない! ここはもっと欲張って、森の小鳥たちを探しましょう。さて、どんな鳥に出会えるでしょうか。

池から上がったところが御殿山と呼ばれるエリア。雑木林が広がっています。
森の小鳥たちはかわいいのですが、池の水鳥たちに比べるととにかく小さい。見上げなければいけないので首が痛い。さらに今の時期は木々の葉が茂っていて、見つけるのにも一苦労。どうやって探せばいいのでしょう。

ちょっと耳を澄ましてみましょう。



 
聞こえましたね、「ツピ」というかすかな声。これ、実はシジュウカラの地鳴きなんです。
鳥たちは繁殖期以外にはほぼさえずりません。だから探すのは簡単ではないのですが、さまざまな声を出すのが手がかり。地鳴きはさえずりと違って歌ではないし、短い鳴き声なのですが、耳を澄ますことで気づくことができます。
とりわけシジュウカラは非繁殖期にほかの種と群れになって、さまざまな地鳴きを使い分けてコミュニケーションをとるので、よく声を出すのです。

シジュウカラ

シジュウカラはスズメ大の小鳥で、枝から枝へよく動いて、いつもきょろきょろし、イモムシを見つけては食べます。よく動き、よく食べる。そしてすでに紹介したように、よく鳴くのです。
胸に1本黒い縦の線があるのが特徴。ちなみにこの線が太いのがオス、細いのがメスです。住宅地でも見かけることがあります。
シジュウカラを見つけたら、その周囲を見回すとよくほかの種が見つかります。混群といって、非繁殖期に異なる種同士で群れをつくるからです。

メジロ

メジロはその代表格。シジュウカラよりも小さく、スリムな体形です。うぐいす餡みたいな緑色ですが、ウグイスではありません。そもそも緑色の餡を「うぐいす餡」と呼ぶことがおかしいんですよね。「うぐいす色」は灰緑褐色なので。
目の周囲が白く縁どられているのが名前の由来。この子も枝から枝へちょこまか動きまわります。「ツィーン」「チュルチュル」といった地鳴きをしますので、覚えておきましょう。
メジロは昆虫も食べますが、甘い汁が大好き。冬になるとさまざまな花の蜜や樹液をなめますので、シーズンが来たらまた観察してみましょう。

コゲラ

メジロと並んでシジュウカラとよくチームを組むのがコゲラ。国内でいちばん小さなキツツキです。
「ギー」という声がとても印象的。似た声を出す種はほかにいないので、覚えやすい声です。
木の幹や枝に平行にとまるのがキツツキのなかまの特徴で、よく観察すると混群の中でコゲラの動きが異なるのがわかります。「ギー」と鳴きながら、木から木へ飛び移り、幹を上っていきます。キツツキらしく「コツコツコツ」といい音を立てて、木をつつき始める場面も見られます。

エナガ

かわいい小鳥として人気のあるエナガ。尾羽が長いのが特徴で、「柄長」と名づけられました。
全長14cmですが、尾羽を除くと国内最小クラスの小ささ。体重はたった数グラムです。
かつては郊外へ足を延ばさないと見られない鳥でしたが、最近は身近な公園でも増えているようで、混群にもよく混じっています。「シシシ」「ジュルリ」と鳴きながら、さかんに枝移りして移動。キュートなルックスを見れば、人気ぶりにも納得できます。

サンコウチョウの幼鳥

『野鳥手帳』よりサンコウチョウのページ

ここまでに紹介してきた鳥たちは留鳥。一年中見られる鳥ですが、この時期は混群にゲストが混じっていることがあります。
その代表格がサンコウチョウ。子育てのため、春に南方から日本に渡ってくる夏鳥で、子育てを終えると、再び南方へ移動します。そんな春と秋の季節移動の途中、身近な公園にも立ち寄ることがあり、混群にゲスト参加するというわけです。
サンコウチョウのオスの成鳥は尾羽がとても長くて、45cmある全長のほぼ2/3が尾羽。
コバルトブルーのアイリングとくちばし、美しくユニークなさえずりで大人気の鳥です。今の季節、混群に混じって見つかるのは尾羽が短い幼鳥がほとんど。
でも、混群に混じっているのを見つけると、なにか森の中で宝物を発見したような喜びがあります。
 
ほかに留鳥ではヤマガラが、夏鳥ではムシクイ類が、混群によく混じる鳥です。
このように、地鳴きを頼りに混群を探すというのが、秋の森での鳥見のコツです。
 
そもそも、鳥たちはなぜ混群をつくるのでしょう?
子育てが終わった非繁殖期、同種も他種も争う必要はなくなります。まさにノーサイド
次の繁殖期に向けて、健康に過ごすことが鳥たちの役目です。そんな非繁殖期の過ごし方として、単独よりも群れで行動したほうが有利なことがあります。
より多くの目があったほうが、天敵の存在にいち早く気づくことができるし、食べ物が少なくなる秋冬に食べられるものを見つけやすくなります。鳴き声でコミュニケーションをとりながら、協力してくらすというわけです。
 
秋の森での鳥見のコツをもう1つ紹介しましょう。

それは、植物の実です。
秋が深まり、気温が下がってくると活動する昆虫は少なくなります。鳥たち、ピンチ!
でも大丈夫。植物の実が鳥たちを支えます。とくに、秋は多くの木の実が熟します。留鳥も渡り途中の夏鳥も、やがてやってくる冬鳥も、木の実をよく食べるのです。

アカハラ

『野鳥と木の実ハンドブック』よりミズキのページ

数ある木の実の中でも人気が高いのが、ミズキ。渡り途中のヒタキ類ツグミ類が好んで食べます。実がたわわに実ったミズキで待つのが、秋の森の鳥見のコツ。ちなみに写真のミズキに来ている鳥はアカハラです。

キビタキ

ミズキで待っていると、夏鳥のキビタキがやってきました。キビタキはミズキが好物。渡りの途中、公園に立ち寄ったんですね。オスはあざやかな黄色と黒の取り合わせが美しく、喉の橙色の色合いには、吸い込まれるような魅力があります。
 

池で見たカワセミの輝く美しさも見事でしたが、キビタキの鮮烈な美しさにも魅了されてしまいました。身近な公園でこんなに美しい鳥たちに出会えるなんて、これはやはり非日常体験! 鳥見って本当に素晴らしいですね。
 
『今日からはじめる ばーどらいふ!』は、今すぐ鳥見を始めたくなった人にぴったりの一冊。
人気の一日一種さんがマンガ形式で伝える鳥見入門です。これから始めるという方はもちろん、なんとなく始めたけどよくわからないという方にもおすすめ。鳥見がぐっと楽しくなります!

『今日からはじめる ばーどらいふ!』著:一日一種

『今日からはじめる ばーどらいふ!』で勧めているのが、冬シーズンの鳥見。今から楽しみですね。身近な公園での冬の鳥見についても、またお伝えしたいと思います。

Author Profile

髙野丈

文一総合出版編集部所属。自然科学分野を中心に、図鑑、一般書の編集に携わる。その傍ら、2005年から続けている井の頭公園での毎日の観察と撮影をベースに、自然写真家として活動中。また井の頭公園を中心に都内各地で自然観察会を開催し、屋外でのイベントだけでなく、サイエンスカフェやカルチャースクールでの講演活動にも取り組んでいる。得意分野は野鳥と変形菌(粘菌)。著書に『井の頭公園いきもの図鑑』(ぶんしん出版)、『美しい変形菌』(パイ・インターナショナル)、共著書に『変形菌入門』(文一総合出版)がある。

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