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BuNa コラボ企画

Collaboration

7/5 2019

ウミウシ見るならここ! 大阪のウミウシminimini水族館に行ってみた

海のカラフルな生きもの、ウミウシ。「写真では見かけても、実際には見たことない!」という方も多いのでは? そんなあなたに、大阪にある「ウミウシminimini水族館」(現在は閉館しています)をご紹介します。
ウミウシの基礎知識から、磯でのウミウシ採集のコツもわかりますよ〜!

ウミウシをお手軽に見に行こう

ウミウシが見られる展示、その名も「ウミウシminimini水族館」があるとのうわさを聞きつけ、BuNa編集部が取材にやってきたのは大阪港。大阪駅から電車で25分、海遊館のとなりにある商業施設「天保山マーケットプレース」の3階にあります。
ここでは約50種のカラフルでかわいいウミウシが展示され、少ない時でも30種、多い時には約70種ものウミウシが見られます。

施設の一角にあるので、開店中はいつでも無料でウミウシを見ることができる

一番人気のアオウミウシ。右の2本のツノのようなものが触角で、後ろの花のような部分が鰓(えら)。カイメンを食べることはわかっているが、餌となるカイメンを見つけるのは相当難しいとのこと

アオウミウシとウミウシ図鑑(『ネイチャーガイド日本のウミウシ』表紙)を比較。図鑑がA5サイズ(A4の半分)なので、意外と小さい

サガミミノウミウシ

シロウミウシ

ハルゲルダ・バタンガス。コンペイトウウミウシに近縁で、その名の通り、体に金平糖のような突起がたくさんある。

左上:ムカデミノウミウシ、右上:フタイロニシキウミウシ、右下:アマクサウミウシ


 
クロコソデウミウシ。おじいちゃんのような渋さとゆっくり感がなんともカワイイ


ヒカリウミウシ。非常に激しいダンスで取材を歓迎してくれた。驚くと光をだす、クモヒトデの腕をよく食べるなど、情報量満載のウミウシ

 
ちなみに、ウミウシは貝殻をもたないだけで巻貝のなかま。陸上にいるカタツムリやナメクジとも近い生物なのです。多くは大人になっても数センチの大きさですが、アメフラシのように30cm以上になるものもいます。
 
※ウミウシの基礎知識についてはこちら!
・「どんくさいウミウシの、超まずい生き残り方法」
・「さまざまな色・形のウミウシたち」
 
ウミウシminimini水族館で展示しているのはほとんどが大阪湾、若狭湾、三重、和歌山などにいる日本のウミウシ。実はウミウシは寿命が短いと言われていて、長く生きるものでも1年ほどだそう。展示を維持するために、学芸員の田中さんが大阪近郊の海へ採集に行って、ウミウシを入れ替えたり増やしたりすることもあるそうです。

バックヤードと展示スペース責任者の田中広樹さん。 「常時ウミウシを展示している場所は日本でもウミウシminimini水族館とかごしま水族館くらいだと思います」

ウミウシってどこにいるの?

編集部 カラフルでかわいいですね! このウミウシたちは、どういうところで探してくるんですか?
 
田中さん 砂浜や干潟にいる種類も探しには行きますが、磯の浅いところにいるウミウシを探すことが多いですね。9割がた磯に落ちている大きめの石を裏返して、そこにくっついているものを探します。たまに水中の石の上を歩いているウミウシもいますが逆にびっくりするかんじで、その様子を僕らは「おさんぽ」って言ってます。
 

(編集部が実際に磯で見つけた「おさんぽ」中のウミウシ)
 
 
編集部 それなら自分でも見つけられそうです。探すときのコツはありますか?
 
田中さん 探す時期が大事で、昼に潮がひく日が多い2月から9月にかけての大潮の日、それも干潮のとき(潮が大きく引く時間帯)に探すのがおすすめです。傷つきやすいので、水中でじっくり観察してみましょう。触角やえらを出して這い歩きはじめるかもしれません。
 
※裏返したりひっくり返した岩や石は必ず元の位置に戻しましょう!
石の裏にはさまざまな生物がくっついています。それらの生物は自力では海に戻れないので、石を元に戻さないと死んでしまいます。
 

編集部 なるほど、ウミウシを実際に見るには、潮が引くときの磯がおすすめなんですね。干潮になる場所にいるということは、けっこう強い生き物ですね。
 
田中さん はい、浅いところのウミウシは、夏場だと暑い日はすごく水温が上がったり、雨がふったら真水くらい塩分が薄まったりするような環境が激しく変わるところにいるので、比較的強いと思います。さっき石の下にいるって言いましたが、なぜそういうところにいるかというと、石の裏のような潮が引いても水が残るところでじっとしていれば、潮が満ちてくるまで耐えられるからじゃないかなと思ってます。

知られざるウミウシ

編集部 ここでは主に大阪湾のウミウシを展示しているとのことですが、珍しいウミウシも展示されたりするんですか?
 
田中さん 本当に珍しいウミウシが手に入ったときは研究者の方に送って詳しく研究していただくことが多いです。今までのべ218種類のウミウシを展示してきましたが、特に珍しいウミウシとしては、大阪湾で絶滅したとされていたマツシマコメツブというウミウシを展示したことがあります。大阪近郊は、ウミウシ研究者の故・濱谷巖(はまたに・いわお)氏が残した60年前の記録があり、ウミウシの調査をして比較するのにも良い土地だと思います

マツシマコメツブ

ハナデンシャ

展示のきっかけ

ウミウシ研究にも一役買っているこの展示。もともとは天保山マーケットプレースの集客の一環として提案してみたのがきっかけとのこと。
 
田中さん 最初は6年前の「ウミウシ写真展」という展示に2つ水槽があるだけでした。それがけっこう好評で、僕自身がウミウシのおもしろさにはまってしまって、その1年後に7水槽10種の生体展示をやりはじめたんです。それでだんだん水槽が増えていきました。実は大学生のときの卒業研究でウミウシを研究していたんですが、水族館で他の生物を担当しているうちにほぼ忘れてしまっていて、展示がきっかけで約20年ぶりにまた火がつきました。

でも、展示内容を決める社内の会議では、『なんでウミウシやねん、金魚でもええからみんなが知ってるやつのほうがええんちゃう』と言われたりしました(笑)。でも、絶対にウミウシファンが来ます! と説得して、そのうちテレビや新聞の取材がきたり、アンケートをしてみたところ好評で。『意外と先見の明があったなぁ』という評価に変わっていきました。

お客さんを見ていると、カップルだと女性の方がカワイイと言っていて、男性はちょっと気持ちわるいと言うことが多くて逆はほとんどないですね……。私なんかは休憩中でさえもバックヤードでウミウシの動きを見て癒されてますけどね」

ウミウシ水槽の裏側。家庭用の水槽にフィルターをつけているだけで、意外と簡素。バックヤードで人工海水をつくって水換えし、餌は海藻やヨコエビ、カイメンなどウミウシの種類によってかなり違うので、試行錯誤しながら与えている

田中さんが集めた約290種類の「ウミウシデータ」。いつ・どこで・どのウミウシを発見したという貴重なデータがぎっしり。

田中さん1人がウミウシ展示のすべてを担当している

田中さん 最初はこの展示を維持するために始めたんですが、今はもうウミウシ調査がライフワーク。こんな風に、今まで発見したウミウシの情報をすべてまとめています。石をひっくり返してるのが幸せで、海の近くにすむのが夢です。
 
編集部 私もウミウシにはまりそうです!ウミウシの展示を通して、見る方に伝えたいことは何かありますか?
 
田中さん かつて、大阪湾は環境が悪くなってしまった時期があったんですが、今はかなり綺麗になっていろんな生き物が戻ってきているんです。ここのウミウシもほとんど大阪近郊に普通にいます。海にはこんなにおもしろい生き物がいるんだよ、ということをぜひみなさんにも知ってほしいですね。

 
ウミウシminimini水族館
※2020年4月5日をもって惜しくも終了となったそうです。またどこかで再開される日を願っています!(BuNa編集部)
 
大阪湾にもカラフルなウミウシがいるなんて、知らなかった人も多いのではないでしょうか? minimini水族館でかわいいウミウシを見たら、この夏ウミウシ探しに出かけたくなるかも…。
 
そんなあなたにはこちら!

①フィールド図鑑 日本のウミウシ
日本近海で見られるウミウシ340種の識別図鑑。最初のウミウシ図鑑としておすすめ。Amazon
 
②ネイチャーガイド 日本のウミウシ
日本で見られるほぼすべてのウミウシ、約1400種を収録。ウミウシファン必携の1冊。Amazon
 
③SUNDAY MORNING ウミウシのいる休日
美しいウミウシたちに癒されたいときにおすすめ。水中写真家・鍵井靖章とウミウシ研究者・中野理枝のコラボによるウミウシ写真集。Amazon
 
●観察会
ネイチャーおおさか 大阪湾ウミウシ観察会
ネイチャーおおさか(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)では、大阪湾ウミウシ観察会を定期的に開催。毎回10~20種類のウミウシが見つかるそう。大阪のウミウシ好きが続々集結中。

Author Profile

BuNa編集部

株式会社 文一総合出版の編集部員。生きもの、自然好きならではの目線で記事の発信をおこなっている。

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