2月1日より2週間、六本木のフジフイルムスクエア内のミニギャラリーで、「SNAP!BIRDS」という写真展を行うことになった。「人の暮らしの中にある“鳥風景”」をテーマに、約20点の作品を展示する。
シロカツオドリが目を覚ます頃、灯台が夜の務めを終える (ドイツ)
この企画展は、2年間、バードウォッチングマガジン「BIRDER」(文一総合出版)で連載した「鳥好き人の地球の渡り方」の続きの物語と捉えてもらえるといいと思う。世界各地の街と鳥のコラボレーション作品を紹介した同連載を、「新鮮だった」と捉えてくれる方は事前の予想よりも多く、今でも「続きはないの?」と声をかけてもらったり、筆者の名前は覚えていないけどページは覚えてくれていたり、ということがたびたびある。ありがたいことだ。連載の終了から1年がたったが、その後も旅は続いていて、どの場所にいても、鳥の姿を目で探す日々は続いている。
※連載期間:2016年1月号〜2017年12月号(月刊誌)
筆者が「街×鳥」をライフワークのひとつとするきっかけになったのは、2011年に初めて日本を出た北欧の旅にさかのぼる。海外旅行初心者の誰しもがそうするように、カメラ片手に、街の夜景や教会、美術館、その他の古めかしい建物を写して歩いた1ヶ月。手にはスナップ用のズームレンズ1本だけ。スウェーデンの首都ストックホルムで、湖畔に立つ教会を写そうとファインダーをのぞいた時、画角に飛び込んで来たのがそう、連載の1回目(BIRDER 2016年1月号)に載せた、カワアイサ。日本にもいる鳥だけど、日本では見られない「鳥の暮らす景色」だ。
BIRDER 2016年1月号・連載の初回
日本で生まれ育った筆者にとって、いかにもヨーロッパ調の建物を背に見る鳥たちはとても新鮮だ。そして、写る鳥が知っている鳥(すなわち、日本でも見られる鳥)であるほど新鮮だった。チェコ・プラハでは、街中にユリカモメの群れが眠っていた。有名なサグラダ・ファミリアの天辺からは、ハヤブサがバルセロナ市街を見下ろしていた。いずれも人々の生活圏の近くで、当たり前のように暮らしている。そして、不思議なほどその土地の景色に馴染んでいた。
帰国して気がついたことは、日本の街中にも「鳥の暮らす景色」が溢れていること。しかし、その存在に気づいている人はわずか。多くの人にとって鳥や自然は「出かけて、観に行くもの」であって、日々の生活の傍にあるものとは思われていない。だが、鳥の姿に気づくことができれば、都市での忙しない日常の中に、ちょっと幸せな気分をもたらしてくれるはず。そう思ってしまうのはお節介だろうか・・・。
互いに無関心なオシドリとサラリーマン(北海道・札幌)
この展示を東京の都心・六本木で行えることを嬉しく思っている。仕事帰りや休日のお出かけのついでに、ふらっと立ち寄って、人々の暮らしの近くにも、これだけの鳥がいることを知って欲しい。そして翌日の帰路では、身近にある自然に少しの興味を向けてもらえたら。そういうきっかけになる展示となれば嬉しい。
タイトル:【企画展】菅原貴徳「SNAP! BIRDS」
期間:2019年2月1日(金)~2月14日(木)
午前10時~午後7時(最終日午後4時まで・入館終了10分前まで)
会場:フジフイルムスクエア ミニギャラリー 入場無料・会期中無休
セミナー:2019年2月1日(金) 午後5時~午後6時/2019年2月2日(土) 午後2時~午後3時
作品点数:カラー約20点
企画:(株)日本写真企画・協力:富士フイルム(株)
http://fujifilmsquare.jp/detail/19020103.html
※会場にて図録販売予定。1000円+税。
Author Profile
菅原 貴徳
平成2年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持って育ち、11歳で野鳥撮影をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー北極圏への留学で海洋生物学を学び、名古屋大学大学院で海鳥の行動生態学を学んだ後、写真家に。国内外問わず、様々な景色の中に暮らす鳥たちの姿を追って旅をしている。著書に『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)がある。
HP [Field Photo Gallery]:http://tsugawarakaiyo.wixsite.com/pechi-fieldphoto