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3/20 2019

あるある昆虫相談室 おしえて!虫のおじさん

第5回 アリを飼ってみたい!

ここは昆虫館に勤める学芸員が、年間に何百件と受ける虫の質問のうち「よくある質問と答え」を紹介する連載シリーズの1ページです。
第5回はアリの飼育方法についてご紹介します。
 
アリはとても魅力的な昆虫です。冬以外の季節であれば、地面をながめるとたいていの場所でアリがみつかります。もう少しよく見てみると、大きさや色のちがいだけでも何種もいることや、行列を作ってエサを運ぶ姿などの行動にも気づくでしょう。アリは一日中ながめていても飽きることはありません。
さらにアリは女王アリさえ入手できれば(これが少し難しい)、飼育はそんなに難しくありません。この記事を読んで、みなさんもアリの飼育と観察を始めてみてはいかがでしょうか?

クロオオアリの飼育ケース

生きもの飼育の基本
「最後まで飼う。野外に逃がさない。」
 
まず、アリだけでなく、生きものを飼育する際に覚えておいてほしいことがあります。それは、一度飼い始めた生きものは、死ぬまで飼育する責任が飼い主にあるということです。飼いきれなくなったからといって、野外には絶対に逃がさないでください。生態系への影響があるということだけでなく、一度飼い始めた生きものには最後まで愛情を注いで添い遂げてください。「自然に返してあげる」のは間違いです。

女王アリを採集しよう

アリを飼うためには、まずは野外に採集に行く必要があります。アリは女王アリ、オスアリ、働きアリなど、分担された役割を持つ家族で生活する社会性昆虫です。ひとつの家族の中で最も多いのは働きアリで、彼女ら(働きアリの性別は全てメス)はエサの調達や卵や幼虫のお世話など、多くの仕事をこなします。
しかし、巣の中で卵を産むのは基本的に女王アリだけです。アリを飼育して子育てを観察したり、家族が増えてゆく様子をみたりしたい場合は女王アリを入手する必要があります。
 
アリの巣を掘って女王アリを捕まえる方法は不可能ではありませんが、とても大変です。女王アリの入手は、結婚飛行の終わった新女王アリを採集するのがよいでしょう。
 
アリは種によってある程度決まった時期に巣内で新しく生まれた女王アリとオスアリが飛び立ち、交尾を済ませた後にその新女王アリが新しい巣を作る時期があります。たとえば、比較的飼育の容易なクロオオアリは5月中下旬頃(筆者の住む関西地方の場合)に結婚飛行を行い、巣のある場所の周辺の地面をよく探すと交尾を終えて翅を落とした女王アリがみつかります。

アリの飼育ケースの作り方・飼育のしかた

アリの飼育には、ケースの中に土を入れる必要はありません。筆者は飼育ケースとして、湿らせた石膏を敷いた小さなプラスチックケースに穴をあけ、それらをシリコンもしくは塩化ビニール製のチューブ(外径8mm、内径6mm)でつないだものを用いています。以下、飼育ケースの作り方と飼育のしかたを紹介します。

石膏を敷いたスチロールケースを連結したアリの飼育ケース

準備物

[ケース]
•サンプラテック スチロール角型ケース 型番2261 外寸法(縦×横×高さ; mm):65.0×34.0×17.5
•焼石膏
•シリコンチューブ 内径6mm 外径8mm
•電動ドリル
•ドリルビット 3mm(下穴用)と8mm
[エサ]
•テトラフィン
•乾燥赤虫
•ハチミツ(国産の良質なもの)

アリの飼育に使うサンプラテック スチロール角型ケースNo.1 型番2261

飼育ケースの作り方

まず、スチロールケースに電動ドリルで穴をあけます。3mmのドリルビットで下穴をあけた後、8mmの穴をあけて仕上げましょう。穴はケースの片側と両側の両方を複数個作っておくとよいでしょう。
※電動ドリルの取り扱いには安全面に十分な配慮をお願いいたします。

ドリルで3mmの下穴をあけたあと、8mmの穴をあける

焼石膏をほぼ同量の水と混ぜ合わせます。何度か経験を積むとどれくらいのかたさに混ぜればよいのかがわかってきます。
残った石膏は固まってやっかいなので、捨てても良い容器と割り箸で混ぜると良いでしょう。

焼石膏と水を混ぜ合わせる

スチロールケースをならべ、ドリル穴に短く切ったチューブを詰めておきます(こうしておくと石膏を敷いたあとにうまくチューブが通るようになる)。ケース中央に水でといた石膏を落とします。何度かやると適量がわかってきます。ケースをゆすったり机にトントンしたりして、石膏の表面を水平にならします。

スチロールケースに石膏を入れる

ケースをゆするなどして石膏を水平にならす

石膏は1時間~半日ほど放置し、かたまるのを待ちます。カビの原因になるので石膏表面は指でさわってはいけません。しかしまちがいなくさわってみたくなります。はじめのうちはあえて触ってみて、見た目と湿り具合の勘所をつかみつつ、どうしたらカビが生えるのかを学んでもよいかもしれません。

石膏がかたまるまで静置する

エサは糖分としてハチミツを、そしてタンパク質と脂質として乾燥赤虫およびテトラフィンを与えるとよいでしょう。ほかにリンゴや昆虫ゼリー、ミルワームや捕まえてきた小昆虫など、アリが飽きないように色々と与えましょう。

アリに与えるエサ;左からハチミツ、乾燥赤虫、テトラフィン

筆者は乾燥赤虫とテトラフィンは使い古しのコーヒーミルで挽いて粉末状にしていますが、しなくとも問題ありません。

乾燥赤虫とテトラフィンは粉末状にしておくと扱いやすい

肉エサの作り方:赤虫とテトラフィンとハチミツを小皿に入れ、爪楊枝などで突きながら混ぜ合わせます。濃いハチミツを混ぜ合わせるとカビにくくなりますが、ペースト状にしてしまうとアリの食いつきが悪くなります。ふんわりと粒状感のあるようにするとアリが持って帰りやすくなります。

乾燥赤虫、テトラフィン、ハチミツを入れて混ぜる

ふんわりと粒状感があるように仕上げるとよい

4~5cm角に切ったアルミホイルを2回折り、三辺を折り立てたものをお皿にして、肉エサとハチミツを入れてエサ皿をつくります。こうするとエサの交換がしやすいお皿が出来ます。

アルミホイルを折り、三辺を立ててエサ皿を作る

肉エサとミツ餌をそれぞれ入れたエサ皿

スチロールケースをシリコンチューブで連結します。エサ皿置き場のケースは石膏を敷かず、乾燥気味にしてカビが生えないようにしましょう。
シリコンチューブは外径8mm内径6mmのものがどのサイズのアリにも適合します。また、このチューブは昆虫採集に使う吸虫管の材料にもぴったりなので、アリファンは買っておいて損はありません。

エサ置き場のケースには石膏を敷かず、乾燥気味にする

ケースを連結するチューブは外径8mm内径6mmのものが良い

小型で個体数の多いアリ(オオズアリなど)を飼うと、エサ場を巣内で出たゴミで汚してしまうことがあります。ミツエサと肉エサのケースをそれぞれの両端に配置して、ミツエサを汚されにくいように工夫するとよいでしょう。

オオズアリの飼育ケース

ケースをいくつか連結すると、それぞれのケースをエサ場、ゴミ捨て場、卵置き場、幼虫飼育、蛹置き場など、アリが使い分けるようになります。黒い布をかけておくと、そこで女王アリと幼虫が落ち着きます。中ほどのケースでもアリの数が少なめ、という場所は汚れてきたサインなので交換してください。

黒い布をかけておくと、そこで女王アリと幼虫が落ち着きやすい

さらに自分で工夫を重ねよう

ここで紹介したアリの飼育方法は、必ずしも最良のものであるとは限りません。アリの飼育はとても奥が深いものです。アリの種や、季節によっても飼育方法を変える必要があります。より良い飼育方法となるよう、工夫してみてください。
 
【参考図書】
アリハンドブック 増補改訂版(文一総合出版)

Author Profile

長島 聖大

伊丹市昆虫館に学芸員として勤務.分類学を中心にカメムシを研究する伊丹市昆虫館学芸員.恐竜と虫が大好きな長男(6歳)と,産まれたばかりの次男の父ちゃん.『日本の昆虫1400①』『日本の昆虫1400②』(文一総合出版)『日本原色カメムシ図鑑第3巻』(全国農村教育協会)
Twitter:@calisius
ブログ:ピンセットサロン

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