一覧へ戻る

連載記事

Running Story

4/25 2018

あるある昆虫相談室 おしえて!虫のおじさん

第1回 赤い新種?! 残念ヨコヅナサシガメちゃんでした!!

ここは昆虫館に勤める学芸員が、年間に何百件と受ける虫の質問のうち「よくある質問と答え」を紹介する連載シリーズの1ページです。記念すべき第1回は、「新種と間違えられる昆虫」です。ふだん見かけないよく目立つ昆虫が見つかったとき、「これはもしや新種では?」と質問を受けることが多々あります。その中でも今回ご紹介するヨコヅナサシガメは、よく新種と間違えられて持ち込まれるもののひとつです。
ヨコヅナサシガメ(カメムシ目サシガメ科)は本来南方系で、ナガサキアゲハやクマゼミと同じように分布をどんどん北上させている昆虫のひとつです。国内では九州でのみ見つかっていたものが、ここ20~30年で関東地方以北にまで拡がりました。こういった昆虫の分布拡大の理由としては、地球温暖化により生息可能地域の北限が北上していると考えられることが多いのですが、ヨコヅナサシガメを含め多くの生物種でそれぞれの詳細な生態的事情はまだ明らかになっていません。
ヨコヅナサシガメは、公園や街路樹のサクラやエノキの幹で見つかることが多く、ガの幼虫(毛虫・イモムシ)などの小さな昆虫を捕らえ体液を吸って生活しています。分布域ではいわば“普通にみられる虫”で、モノクロな体色でもあるので目立たない地味な虫といえます。

ヨコヅナサシガメの成虫

そんなヨコヅナサシガメが、一躍脚光を浴びるのが春の季節です。
木の幹に幼虫の集団をつくって越冬するヨコヅナサシガメは、春になると羽化して成虫になります。脱皮したばかりの成虫は、目の醒めるような鮮やかな赤色をしていて、とてもよく目立ちます。これを見た人は「なんやこれ?みたことないで!新種発見や!」となって近くの博物館や昆虫館に持ち込みます。私たち学芸員はこのような時にいかに相手ががっかりしないか、慎重な回答をする必要があります。

羽化直後のヨコヅナサシガメ

羽化直後は鮮やかな赤色をしている

ヨコヅナサシガメの幼虫

ちなみに「新種」とは「地球上にいる生きもので、人間が発見して名前をつけた(命名した)直後のもの」のことをいいます。昆虫は膨大な種数がいるので、まだまだ見つかっていない(or名前をつけていない)ものはたくさんいます。厳密に言うと、そういったまだ名前のついていない生きものは「未記載種(みきさいしゅ)」と呼んで新種と区別しますが、そのあたりは機会があればまた詳しくお話ししましょう。
いずれにしても、「これ新種かも!」と博物館や昆虫館に持ち込んだ虫が本当に新種だったり、大発見に繋がるものであったりした例もたくさんあります。見慣れない生きものを見つけた方は、新種でなかった時のがっかり感にめげず専門家にお問い合わせください。

Author Profile

長島 聖大

伊丹市昆虫館に学芸員として勤務。分類学を中心としたカメムシの研究を専門としている。調査に欠かせない道具であるピンセットの研究にも力を注いでいる。5歳の長男と虫採りに行くのがなによりの楽しみ。著書『ポケット図鑑日本の昆虫1400①・②(文一総合出版)』、『日本原色カメムシ図鑑第3巻(全国農村教育協会)』。

Back Number あるある昆虫相談室 おしえて!虫のおじさん

Information

  • instagram
このページの上に戻る